根本原因に目を向けず、不具合の連鎖に忙殺される現場監督者
どの業界でも同じことが言えるが、少子高齢化が進み、生産現場の若年層が少なくなってきている。多くの生産現場で人手不足のため、現場管理すべき監督者がプレイングマネージャー化し、自ら工程に入り日々の計画を達成させている状態が見受けられる。自らが作業を行うことと併せ、不具合に自ら対処することで、生産を成立させているため、表面上は問題が無いように感じられる。
しかしながら、監督者は自身が管理監督すべき現場で発生した生産の遅れや不良、設備トラブルなどの問題に対し、発生した現象やその後の対処に追われている。お客様からのクレームや工程内不良で同じような不具合が繰り返し発生し、歯止めがきかない。さらに、不具合に対して応急処置しかとらず、また現場に対してはこれ以上出すな!と声がけのみになっている。
本来は不具合の根本原因に対する対策、再発防止の仕組み、構造的な問題に手を打つべきであり、それこそが本来監督者が実践すべきことである。
現場監督者は問題の「司法解剖」をしているにすぎない
なぜ、そのような状態になっているのか。現場監督者がやっていることは、まさに「司法解剖」に例えることができる。何かしらの犯罪を匂わせる事件・事故で人が亡くなった場合、刑事訴訟法に基づいて司法解剖が行われる。司法解剖では、創傷の有無やその凶器の種類とその使用方法、死因、死因と創傷との因果関係、死後の経過時間などを検査するが、それは死に至った直接的な原因を突き止めることにある。
その後犯罪と分かった場合、警察や検察官によって犯人に対し、犯罪を起こした動機を探る。そしてその動機を起こさせる社会の仕組みや取り巻く環境などの背景を踏まえ、根本原因を探っていく。監督者はまさに、ここでいう司法解剖の部分しかやっておらず、その裏に潜む根本原因を見ていないのである。
なぜ見ていないのか。監督者もその日その日の現場作業に追われ、目の前で発生している事象に集中してしまっていることもあるが、監督している現場の仕組みが正しいと盲目的に思い込んでいて、その仕組みをより良くすることを考えていないことも原因と考えられる。また、現場で作業や対処をしている方が、改善するよりも楽で楽しいと思っている監督者もいる。 厳しい言い方をすれば、監督者は発生した問題の根本的な原因を考えることを放棄している、と言っても過言ではない。