「一人前」の定義は「作業半分・改善半分」

 多くの競争力ある現場で引き継がれていた、現場作業者の一人前の定義「作業半分・改善半分」。この意味は通常作業ができても半人前、改善ができてこそ一人前という意味である。職位が上がればなおさら改善の役割領域が広くなる。このことを監督者・管理者は忘れてはならない。

 競争力ある会社の現場の一人前の定義は「作業半分・改善半分」である。一人前の定義すらない会社は、ぜひこれから考えてみてほしい。決まったことをしっかり行う中で、小さな問題でもひとり一人が見つけていくことが重要である。たとえば、「作業時に歩行が多いな」「部品を取るのに遠いな」などの気づきで十分である。その感性が改善に繋がる。

問題解決と改善を楽しむ職場とメンバーへ

 最近いくつかの会社にお邪魔すると、正社員が改善しておらず、ほとんどが労務提供という会社が増えてきたと思う。当然安い労働力のみを使うという戦略もあるが、日本の会社だと正社員は自主改善でき、人の成長を促しながら強くなる勝ち方が結果現場も強くし、経営貢献をしている。そのやりがいと誇りは離職対策にも有効と考える。

 これらのことから、とくに正社員の役割定義として、改めて「作業半分・改善半分」を進めていくことが重要だと思う。

 また、ほとんどの工場の現場で、正社員と非正規雇用の方が働いているのも事実である。その正社員と非正規雇用の方との関係で同一労働同一賃金という観点からみても、正社員は付加価値の高い仕事の割合を上げていくことが重要である。

 改善も自主改善的に行う場合、必要な思考・スキルとして「問題解決力」がある。 職場のさまざまな問題を捉えることが大切であるが、そもそも問題を感じるということは、その対象の「ありたい姿」がイメージでき、実態との差があるから「問題」の発見となるのである。

 また、問題を見つけたら、なぜその問題が発生しているのか?の「なぜなぜ」を考えること、そして、「どうする」ということで、目的を満たす複数の代替案を考え、60点でもいいので、まずやってみる(試してみる)ことが重要である。全てを書き物にする必要はなく、上記の思考プロセスで考えることを教えること、そして監督者・管理者であれば問いかけること大切である。

 上記の問題解決(=改善)を自ら行えるようになると、成長感・貢献感もあり、楽に儲かる職場に繋がる。 加えて、改善だけに捉われず、自分の設備は自分で守る「自主保全」を行うための保全スキル、ありたい職場へ自ら工作して改善していく工作スキル(はじめはプラ段ボール工作で十分)が幅広く身に付いていけば、改善のレベルも上がり、個人・組織としても成長し仲間意識も高まり一体感も出てくる。

 もっと面白く、楽に儲ける現場にしていくためには、労務提供だけで終わらない知恵とスキルが重要である。

コンサルタント 石田秀夫(いしだ ひでお)

取締役
生産コンサルティング事業本部(兼)TPMコンサルティング事業本部
本部長(兼)副本部長 
シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業戦略・商品戦略・技術戦略・知財戦略を組み合わせた「マネできない ものづくり戦略」を提唱し、次世代ものづくり/スマートファクトリー化推進のコンサルティングに従事している。