世代交代をきっかけに品質保証基盤を改革

 今回は、とある中堅企業の品質保証の改革について記そう。紹介するのは、従業員約80名のある繊維製品メーカーY社での改革活動である。

 Y社はカーペット等リビング用の繊維織物を製造しており、創業以来、オーナー社長が敏腕を振るい業績を伸ばしてきた。しかしながら、日本の繊維製造は中国とのコスト競争の波にもまれ、中堅の企業は淘汰されていた。Y社もその岐路に立たされた会社の1つだった。

 そのような中、Y社に1つの転換期がやってきた。それは世代交代である。創業社長も高齢となり、また社長とともに工場を立ち上げ、会社を引っ張ってきた人々から、新しい世代への交代をしなくてはならなかった。

 収益の低迷から脱却を図るには、この世代交代の成否がキーとなると社長は考えた。そのためには、新体制を築き、新しい事業のコアを作らねばならない。この改革の中心となったのが、次の社長を担う人だった。

 そこで、生まれ変わりの軸として「品質保証」を挙げた。これまでも決して製品クレームが多かったわけではなく、新しい技術も取り入れ、新商品も投入してきた。しかしながら、それは創業してきた世代の「人」に依存したものであって、"組織"としてお客さまに安心していただける品質保証体制が築けているかといえば、そこが大きな弱点だった。

 これに気付かされたのは、新たな市場、自動車産業への参入を画策した時である。リビングから自動車用カーペットへの参入には、品質保証という大きな壁があった。

ISO9001による品質保証改革の成功

 品質保証といえば、ISO9001の品質マネジメントシステムが当然のことながら頭に浮かぶ。世の中ではISO9001が普及しており、認証登録をしているのが当たり前とさえいえる状況である。今までもISO9001認証取得を考えたことはあったが、その必要性や会社にもたらす効果が今ひとつ消化しきれず、導入に踏み切っていなかった。

 これから何を変えていくのか考え抜いた結果、次のような結論に至った。
① 自信をもってお客さまに見てもらえる「良い品質を生み出せるしくみと管理」を作る。
② 新しい世代が自分たち自身の手でしくみを作り上げることにより、考える組織と人を作る。
③ 自動車メーカーに認められ、新たな商品と顧客を勝ち取る。

 Y社はISO9001をベースに、これらを実現する品質マネジメントシステムを作り上げることにした。営業、開発、製造、品質管理、資材調達、物流、総務の各部門より、次世代のリーダーとして期待するメンバーを集め、プロジェクトを編成し活動を開始した。

 Y社の品質マネジメントシステム構築活動において、特に力を入れて活動したのは、次の点だった。