日本企業の残念な現状
気になる日本企業の立ち位置。「スマイルカーブ」を思い出そう。
クルーズやウェイモの無人の自動運転はテクノロジーとして「華」があり、この手のニュースは情報としてエキサイティングに映る。また、自動車のビジネスのビジネスモデルが「製造」から「サービスやシェア」へ軸足が移って行き、自動車会社の「なりわい」が変化することも事業経営やマーケティングの視点からも興味深い。
しかし、今一度、「自動運転試験の走行距離」の表を見返して、冷静に考えてみよう。筆者が大いに気になっているのは日本の立ち位置だ。トップ15社のうち、米国企業は8社、中国企業は5社で、日本企業はトヨタが13位にランクインしているにすぎない。
走行距離と自動運転ソフトウエアの技術に相関関係があるとすると、CASEの時代、自動車産業で覇権を握る可能性が最も高いのは米国と中国の企業ということになる。
「スマイルカーブ」の両端、すなわち付加価値(利益率)の高い「企画開発」と「サービス」の両端は米国と中国の企業にしっかり握られ、日本勢はレッドオーシャンの「部品調達」「製造」「納入/販売」の狭間に落ちて苦しむという構図。デジタル機器やスマートフォンのビジネスで日本の企業の多くが苦杯を舐めたことのデジャヴにように思えてならない。
日本勢でその構図に抗い、存在感を示そうとしているプレイヤーが、EVの制御OS「Arene」(アリーン)を独自開発し、中国のポニー・エーアイにも出資するトヨタだけというのは正直心許ない。
また、今月3月4日にソニーとホンダのEV連携が記者発表されたが、ブランドストーリーやハードウエアとしてのEVの量産が話題(報道)の中心で、CASEの時代に成否の鍵を握るソフトウエアの開発について深い議論になっていない点には強く違和感を覚えるところだ。
国や多くの企業がいまだに過去の成功体験に浸って相変わらずモノ作りを重視し、標準化の鍵を握るソフトウエア(OS)への投資や開発を軽視している現状が残念でならない。
不都合な真実に向き合い、「変化のためのゲーム」を起こすことを、多くの日本のビジネスパーソンは危機感を持って感じ取るべきではないだろうか。