筆者は、今年(2022年)1月にCES 2022の基調講演に2年連続で登壇したメアリー・バーラCEOのやつれぶりが気になっていた。自動運転タクシーのベース車両となっているGMのEV「シボレー・ボルト」はバッテリーを供給している韓国のLGエネルギーソリューションの技術的な不具合により昨年来、全米で相次いで発火事故を起こし、大きな問題となっている。また、GMは3件のリコール実施で18億ドル(約2300億円)にも及ぶ費用負担を抱えているほか、EVの戦略プラットフォーム「Ultium」(アルティウム)のバッテリーの調達先を根本から考え直さなければいけない深刻な事態に陥っている状況だ。
だが、無人自動運転タクシーの体験試乗は、彼女にとってもつらい日常を忘れさせてくれる、感動と興奮に満ちたエモーショナルな体験だったようだ。
クルーズとウェイモが先行する無人の自動運転タクシーサービス
全米で無人の自動運転タクシーの開発競争は、言うまでもなく、このクルーズとグーグル傘下のウェイモの2強を軸に進んでいる。
下の表を見てほしい。各企業がカリフォルニア州車両管理局(DMV)に「運転席に人が乗る自動運転車」として登録した車両が自動走行を行った年間の累積距離を示したものだが、1位のウェイモが232.6万マイル(374.3万km)、2位のクルーズが87.6万マイル(約141万km)と2社が他の企業を圧倒していることが分かる。地球1周がおよそ4万kmといわれているので、それぞれ年間で地球を約94周、約22周した計算になる。