「日経ビジネス」の記事(2022年2月28日号「GM系無人運転車、都市を快走」)によれば、クルーズが「運転席に人が乗らない自動運転車」として登録した車両が自動走行した距離は延べ6366マイル(約1万km)に達したという。また、2021年11月に始めたサンフランシスコ市街地での社員や関係者向けテストは2022年2月1日までに600回以上、走行距離にして約2万マイル(約3.2万km)に上った、とされている。無事故でこの距離を走り抜けたことは、クルーズの自動運転技術の水準の高さゆえ、だろう。
ちなみに自動運転の走行距離で第3位のポニー・エーアイ(中国)は、2021年10月18日にカリフォルニア州のフリーモントで無人の自動運転テスト中(車線変更時)に中央分離帯と道路標識に衝突する自損事故を起こし、カリフォルニア州車両管理局(DMV)から無人運転の認可を取り消された。
ポニー・エーアイは日本のトヨタや大手ベンチャーキャピタルのセコイアキャピタルから総額10億ドル以上の資金調達を実現し、中国国内ではバイドゥと並び、北京のエリア内で自動運転車を商用運転することが当局から承認されている。最先端を走るテック企業にとっても「無事故」のハードルは、それだけ高いのである。
また、自動運転タクシーは新しい事業としてのポテンシャルも相当に大きい、とGMは考えているようだ。GMのメアリー・バーラCEOは2022年2月1日に開いた決算発表会の席上、10年後にクルーズの売上高が500億ドル(約5兆8000億円)に達する可能性があることに言及した(参考:CNBC“GM CEO Mary Barra takes first autonomous car ride with Cruise: ‘It’s just surreal’”)
将来のビジネス拡大に向けて、準備も抜かりない。無人の自動運転タクシー専用車両の開発は、北米での四輪事業の戦略的アライアンスを締結しているホンダとの間で進んでいて、2022年には「The Cruise Origin」と命名されたEVがデトロイトのGMの新たな製造拠点「ファクトリーゼロ」で量産される予定になっている。
一方、クルーズのライバルとなるグーグル傘下のウェイモも規模では負けてはいない。全社で約600台の無人自動運転車を保有し、2019年からアリゾナ州・州都フェニックス郊外のシャンドラー、ギルバートメサ、テンピ地区において300台体制で無人の自動運転タクシーのサービスを展開していることが知られている。
2021年5月には、営業運転中に車線規制のコーンの存在によって予期せず停止した無人自動運転タクシーが、利用者の救出に向かったウェイモのクルーを振り切って走り出すという“珍事件”が起きた。しかし、TVニュースでその事件に関わった利用者のインタビューを見る限り、当地でのウェイモのサービスは安全性に対して十分な信頼を勝ち得ているようだ。
クルーズもウェイモも限られたエリアでの実証実験という段階はクリアしつつある。次のチャレンジは対象エリアの拡大だ。