しかし、今回の方針転換でアマゾンは、事実上のワクチン接種義務化にかじを切った。同社はこれまで、全従業員を対象に新型コロナ関連の病気有給休暇を付与していた。だが、今後はその対象からワクチン未接種者を除外する。コロナ関連の病気有給休暇を取りたい人は、21年3月18日までに2回目の接種を終える必要がある。
物流混乱やコスト増の回避が背景に
その背景には、数十万人の倉庫従業員に依存する物流業務の混乱を回避する目的があるようだ。アマゾンは、物流施設などで働く時間給従業員と、技術系などのホワイトカラー従業員の両方を雇用しているという点で他の企業とは大きく異なるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
こうした中、コロナ禍における人手不足や物流停滞に対処するための費用が増大している。例えば同社は、21年9月に米国の物流拠点で新たに12万5000人の従業員を採用すると明らかにし、最低時給の平均を約15ドルから18ドル超(約2100円)に引き上げた。21年10月には年末商戦に向けて米国で15万人の季節労働者を雇用すると発表。初任時の平均時給を18ドルとし、勤務時間帯によって3ドル加算し、契約時に一時金3000ドル(約34万6000円)を支払った。
21年10月下旬には、年末の繁忙期に向けて物流体制を強化。貨物船や航空貨物機などの輸送資源、物流施設の人員を拡充した。また、自社物流ネットワーク内で入港地を5割増やしたり、海上輸送業者から物流倉庫を追加確保したりしてコンテナ処理能力を2倍にした。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、アマゾンが21年10~12月期に、世界的なサプライチェーン混乱や激化する労働市場への対応で約40億ドル(約4600億円)を支出した、と報じている。
こうして同社のコストは膨らんでいる。21年10~12月期の営業費用は、前年同期比13%増の1339億5200万ドル(約15兆4600億円)となり、売上高の伸び率(9%)を上回った。
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