物流網への負担軽減
21年は物流の逼迫(ひっぱく)や人手不足、サプライチェーン(供給網)の混乱などにより、米国の小売大手はクリスマス間際の消費者需要を取り込めない恐れがあると指摘されていた。こうした中、米アマゾン・ドット・コムなどの大手が年末セールを前倒して実施した。消費者もクリスマスプレゼントを購入できなくなるとの不安から早い時期から年末の買い物を始めた。こうして消費行動が分散され、米国内物流網への負担が軽減されたという。
配送追跡ソフト開発会社の米シップマトリックスによると、21年12月12日~12月21日における、小口配送の定時到着率は、米フェデックス(FedEx)が91.2%、米UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)が97.1%、米USPS(米郵政公社)が96.9%で、いずれも前の週を上回った。
これら物流大手はあらかじめ施設を整備して年末商戦に臨んだという。例えばフェデックスは134万平方メートル分(東京ドーム約28個分)の仕分けセンター空間を新設した。UPSは自動仕分け機の数を増やし、処理能力を前年に比べ毎時13万個分増やした。
アマゾンは21年10月下旬、年末に向けて物流体制を強化したと発表した。同社は貨物船や航空貨物機などの輸送資源や、物流施設の人員を拡充した。また、自社物流ネットワーク内で入港地を5割増やしたり、海上輸送業者から物流倉庫を追加確保したりしてコンテナ処理能力を2倍にした。同社グローバル・デリバリー・サービス部門上級副社長のジョン・フェルトン氏は「顧客ニーズとサプライチェーンおよび輸送のバランスを保つため、数カ月かけてこの課題に取り組んできた。毎年サプライチェーンと物流網に投資をしているが、今年は規模を拡大した」と説明した。
オミクロン株の影響相殺
ウォール・ストリート・ジャーナルは21年の年末商戦について、「消費者が年末の買い物を前倒したことが、オミクロン株の感染拡大というマイナス要因を相殺した」と報じている。
マスターカードによると21年の年末商戦では、アパレル製品の売上高が前年比47%増、19年比29%増となった。宝飾品は前年比32%増、19年比26%増。電子機器は前年比16%増、19年比20%増。百貨店売上高も前年比21%増、19年比11%増と回復した。
(参考・関連記事)「アマゾン幹部、変異型「オミクロン株」影響を楽観視 | JDIR」