2021年10月に開催されたバーチャルイベント「NTT Communications Digital Forum 2021」において「デジタル変革×新価値創造が生み出す持続可能な社会」というタイトルで、三井化学株式会社 執行役員 DX推進室および情報システム統括部担当 三瓶 雅夫氏とNTTコミュニケーションズ株式会社 代表取締役副社長 副社長執行役員 菅原 英宗氏による対談が行われた。両社ではDXにどのように取り組み、どのような成果が生み出されているのだろうか。

企業変革の基本戦略にDXを位置づけた三井化学

 100年の歴史を持ち、売上高約1.2兆円、従業員数1万8千人の規模を誇る三井化学では「化学の力で社会課題を解決する」という企業グループ像を描き、2030年に向けた長期経営計画に取り組んでいる。

 同社のDXの推進リーダーである執行役員DX推進室および情報システム統括部担当 三瓶 雅夫氏は「直面する課題を解決するためにデジタルの力と事業をどう掛け合わせていくかが求められています」と語る。

 「2030年に向けた長期経営計画の柱となる5つの基本戦略では、素材提供型からソリューション型への移行(モノからコトへの移行)というビジネスモデルの転換を目指していきます。それを実現するための基礎基盤として、MCI DX Visionを定義しました」(三瓶氏)。

 「MCI DX Vision」では「デジタルリテラシーの向上」「業務変革の推進」「開発力の強化」「事業モデルの変革」という4つの戦略が策定されている。現在(Now)の商材や営業、マーケティング、スキル、マインドなどに、デジタルを活用して未来(Future)の要素を加えて、CX(企業変革)の実現を目指す。

 その推進役となるのが、三瓶氏が率いるDX推進室であり、2021年4月に発足した部門横断型の組織である。三瓶氏は「DX推進室の役割は、主に、全社DX戦略の実行・ソリューションの開発・DX人材の育成の3点です。各事業部門のDX推進役としてDXチャンピオンを選出し、DX推進室にアサインしています。このDXチャンピオンは、各部門における課題を正確に把握し、デジタルを活用したソリューションをデザインし、各事業領域へ展開していきます」と現状を語る。

お客さまやパートナーとの共創で「つなぎなおす」NTTコミュニケーションズ

 NTTコミュニケーションズは、昨年新たな事業ビジョンとして「Re-connect X」を打ち出した。リモートワールドにおける価値を再定義し、環境やビジネスや社会を、お客さまやパートナーとの共創によって、安心安全、かつ柔軟に「つなぎなおす」ことで、未来に貢献していくというものだ。

 具体的には、データの収集・蓄積・活用の基盤である「Smart Data Platform」を基軸として、データ駆動型社会において事業と社会をつなぐことでSmart Worldを実現するとともに、分散型ネットワーク社会において安心・安全・柔軟につなぐことでRemote Worldを実現していく。

 同社の代表取締役副社長の菅原 英宗氏は「まずは自社のDXにしっかり取り組み、そこでの成果をお客さまやパートナーに提供することで、共創をして価値を生み出していきます」と自社のDXの位置づけを語る。

 自社DXとしては、制度やルール、環境やツール、風土や意識という3つの領域で「三位一体の変革」に取り組み、ビジネスプロセスの抜本的な改革、柔軟性や多様性を向上させたワークスタイル、データに基づく迅速な意思決定の実現を目指している。

 しかし、そこには「3つの壁」が立ちはだかる。「縦割り型組織によるサイロ化がもたらす“組織の壁”、1,000を超える個別最適で作られてカスタマイズされた“システムの壁”、そしてバラバラなシステムに点在する“データの壁”です」と菅原氏は指摘する。

 これらの壁を乗り越えるために2020年4月に、CDO(Chief Digital Officer)である菅原氏の下に「デジタル改革推進部」を立ち上げ、各組織にはデジタル化の責任者としてDO(Digital Officer)を任命し、コミットメント主体の明確化を図った。「データドリブン経営を目指して、CoE機能(Center of Excellence機能:各分野の専門家が集う組織)を作りました。この機能・組織では、全社視点でデータの分析を行い、各組織におけるDX活動を推進しつつ、経営のデジタル化に向けて取り組んでいます」と菅原氏は語る。