異なるアプローチでデジタル人材を育成

 デジタル人材の育成についても、それぞれから興味深い取り組みが紹介された。三瓶氏は「化学業界でのDXとは何かを明らかにするために、特にS&OP領域を中心に他社事例を集めて『DX Reference Book』の作成に取り組み、社内に配布しました」と話す。200社以上の事例を統一したフォーマットにまとめて収録した。

 しかし、DXプロジェクトを募っても反応はいまひとつだった。その原因がデジタルリテラシーにあると考えた三瓶氏は別の対策を講じた。「DX教育ロードマップ」を作り、リテラシーのレベルを「0」から「3」の4段階に分け、それぞれに応じた教育プログラムを提供したのである。

 「レベル別に獲得するべきスキルを見える化し、それに対応した研修体系をつくりました」と三瓶氏。スキルカテゴリーとしては「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」「ビジネス力」があり、レベル3の人は“業界の達人”に位置づけられる。

 菅原氏は「弊社も、レベルに応じた研修体制を是非取り入れたい」と賛同しつつ、自社の人材開発の考え方を紹介した。その中核となるのは、社員目線の効果と会社目線の効果の両輪を回すことだ。社員と会社の成長循環を創るために、個人のスキルを見える化し、業務にマッチングさせていくことで、チャレンジ機会と成長機会を社員に掴んでもらうという育成プログラムを進めている。

 「ビジネス創出・デザイン・データサイエンス・サイバーセキュリティの4つの先進領域では、先ほどご紹介したCoE組織を中心として、プロジェクト支援型OJTと、CoE組織への長期派遣型OJTの2つのOJTを行い、成長エンジンとなるデジタル人材を育成しています」と菅原氏は語る。

事業におけるDXの効果とは

 事業の強化とビジネスモデルの変革という点ではどのような進め方をしているのだろうか。

三瓶氏はDX推進室を中心に進めている3つのイニシアチブを紹介した。「ブロックチェーン技術によるプラスチック資源循環型プラットフォーム」、「AIを用いた新規用途探索」、「オンラインイベントの開催(12月2日に開催した三井化学フォーラム2021)」である。

 例えば、「AIを用いた新規用途探索」では、研究開発におけるDXとして、MI(マテリアルズ・インフォマティクス)を活用し、新規材料開発にイノベーションを起こしている。「これまでは、研究者の勘・コツ・経験という個人の力量によった網羅的な総当たり実験が行われていましたが、MIを活用することで、高確度な実験ができるようになります。さらにロボティクスと組み合わせることで、自動化を実現できます。効果として、新規材料の発見スピードが従来比で10倍程度早くなりました」と三瓶氏は語る。

 NTTコミュニケーションズでは、ワークスタイル変革を推進してきた。「場所と時間を自在に選択可能なフレキシブルワークと、リアルとデジタルのハイブリッドワークの実践により、直近の従業員満足度調査では、効果が顕著に出ました。特に、女性社員の満足度が大きく向上しました。加えて、フレキシブル・ハイブリットワークのためのデータの見える化や業務・プロセス改革は、データドリブン経営や人材育成にもつながります」と菅原氏。

DXを推進するビジネスリーダーへ向けて

 対談の締めくくりとして、DXを推進するビジネスリーダーへ向けてメッセージが語られた。

三瓶氏は「何のためか、どこを目指すのかを明確にすることが大事。社内では『CX by DX』と位置づけ、企業変革のためのDXであることを明らかにしています」と話す。

 菅原氏は「自らのDXを進めて、アジャイル・コラボレーション・チャレンジできる企業となり、それを通じてお客さまのDXをご支援して、企業を変えていきたい。データで企業がつながることで、産業、社会がトランスフォーメーションされると考えています。ぜひ、皆さまと共に、サステナブルな社会を作り上げていきたいと思います」と語った。

すでに成果を上げつつある2社の取り組みには、DXのヒントがあるはずだ。

※本記事についての動画はNTTコミュニケーションズの公式サイトにて公開しております。(2022年3月末まで)
https://www.ntt.com/business/go-event.html

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