企業理念を実現するエンゲージメント向上に向けて

『組織と制度・ワークプレイスを整えよ』『離れて薄くなるならつながりを太くせよ』という2つの施策について説明した木村氏は、それらの行く末にある「企業理念の実現」についても言及した。

「企業理念や会社ビジョンの実現には、その原動力となる従業員がモチベーション高く働いてくれるという仕組みが必要ではないかと考えます。当社においても『心のゆとり』と『快適空間』ができた後、長期ビジョンが実現できるのかいう目下の課題が生まれ、3つ目の攻めの人事総務戦略として『企業理念実現のためのエンゲージメントを高めよ』を掲げて、動き始めています」

 従業員のエンゲージメントを高める具体策の一つが、オンラインによるマーケティング研修である。

「エンゲージメントとは自社に対する愛着。見方を変えれば、会社の事業を『わが商売』と思ってもらうことです。そこで、私が企画したのが、先述した『ピュアウォッシャー』を用いたマーケティング研修です。受講者は社内で公募し22人の従業員に参加してもらいました」

 実際の自社製品について部門横断メンバーでマーケティングを考えることで、「わが商売を考える」機会を提供。自分ゴト化を進め、イノベーティブな組織風土づくりを狙った取り組みだ。参加者からは「日常に埋没しがちな中、ビジネスの根幹を考える良い機会になった」「コロナ禍でコミュニケーションが減る中、他部門の人と接することができ、意欲の向上につながった」といった前向きなコメントがあったという。同社はこの研修を「Cross My Field Program」と名付け、次年度以降も新たなテーマで継続していく予定だ。

 同社では他にも、インターナルコミュニケーション強化プロジェクトチームを発足し、経営層によるタウンホールミーティングや社内SNSを用いたコミュニケーション施策、更には事業貢献の活躍機会を提供する社内公募制度などを打ち出しており、木村氏はこれらの取り組みで「事業部門の垣根を越えて活躍の機会を提供し、会社と従業員によるWin-Winの関係を築きたい」と話す。

「さらなるサステナビリティー推進に向け、やはり鍵となるのは会社の『人財力』です。当社の創業者である久保田権四郎は、日本がコレラで苦しんでいた時代、初の国産水道管を開発製造しました。世界中で新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう今、私たちもまた事業を通じた社会課題の解決により、世界に貢献していきたいと考えています。そのためにも、まずは主役である従業員の働く環境を整備し、自社の役割を考えることのできる「人財」づくりが大切です。変化の時代に勝ち残るための攻めの人事総務戦略が、企業のサステナビリティーを支えます。その使命を全うするためには、強く生き生きした人事総務部門が肝要です」