双方が一審判決不服とし控訴へ

 法廷闘争の発端は20年8月だった。エピックはApp Storeの手数料が法外だとし、課金を回避するため独自決済システムへのリンクをアプリ内に設けた。アップルはこれが規約違反にあたるとしフォートナイトを配信停止にする措置を取った。その直後にエピックがアップルを提訴。アップルは同年9月にエピックを反訴した。

 前述した通り、地裁判事は21年9月、争点となっていた10項目のうち9項目でアップルに有利な判決を下した。エピックに対しては規約違反によって生じた損害の賠償をアップルに支払うよう命じた。アップルとエピックはいずれもこの一審判決を不服として控訴する方針を示しており、訴訟が決着するまでには数年かかるとみられている。

アップル、手数料減額など一定の譲歩示す

 ただ、米IT(情報技術)大手のアプリストアを巡る不満はくすぶっており、アップルはこれまで批判をかわすために一定の譲歩を示している。21年1月にはApp Storeで得た年間収益が計100万ドル(1億1300万円)以下の開発者を対象に手数料を30%から15%に下げた。21年8月には、アプリ開発者らが起こしていた集団訴訟で和解した。これに伴い、開発者がアカウント登録を通じて入手した利用者の電子メールアドレス宛てにメッセージを送り、他の決済方法を案内することを容認した。

 21年9月には、App Storeを調査していた日本の公正取引委員会と和解した。公取委との和解に基づき22年初頭から一部のアプリを対象に、手数料の支払いを回避しやすくする措置を取る。具体的には、アプリ内に開発者のウェブサイトへのリンクを1つ設置することを認める。開発者はこのリンクから自社サイトに利用者を誘導。これにより利用者は外部の決済サービスで支払いを済ませられるようになる。

 ただ、これには条件がある。雑誌や新聞、書籍、音楽、動画といった購入済みのデジタルコンテンツやサブスクリプション(継続課金)コンテンツを閲覧・視聴するアプリのみを対象にし、App Storeに大きな収益をもたらすゲームは除外する。ゲームアプリの課金手数料はアップルの大きな収入源になっている。地裁判事はApp Storeの全売上高に占めるゲームアプリの比率は70%に上ると指摘している。

 (参考・関連記事)「米地裁がアップルの請求棄却 アプリストア訴訟で | JDIR