丸井グループ、イオン、セブン&アイなどが先行

 政府の2050年カーボンニュートラル宣言に呼応し、脱炭素の取り組みに着手する小売業が目立つ。中でも丸井グループやイオン、セブン&アイ・ホールディングスなどが先行する。SDGs(持続可能な開発目標)やESGに対する課題解決の取り組みが企業の価値を高め、消費者の商品選択につながり始めている。社会・環境にまつわるさまざまな課題が顕在化し、ステークホルダー(利害関係者)の意識の変化に伴って、企業が世の中から求められる役割や責任は、ますます大きく、よりレベルの高いものになっている。

 脱炭素の具体的な取り組み内容をひも解くと、再生可能エネルギーへの転換が大きな柱になっている。19年5月の環境宣言「グリーンチャレンジ2050」に基づいた活動を進めているセブン&アイでは今年4月、イトーヨーカドーアリオ亀有店で再生可能エネルギー使用100%をスタート。オフサイトPPA(Power Purchase Agreement・電力販売契約)により、NTTアノードエナジーが千葉県香取市に建設したメガソーラーから長期的に電力供給を受ける。

 イオンは昨年12月に開業したイオンモール上尾で実質的に使用電力全てを再エネ化した。化石燃料由来の電力でないことを証明する「非化石証書」付きの電力を調達するとともに、東京ガスからもCO2を排出しないとみなすカーボンニュートラルの都市ガスの供給を受けた。イオンでは25年までにイオンモールが運営する国内全施設(155施設)で100%再エネ化を目指す。さらに150近いイオンタウン、300近いイオンリテールの総合スーパー(イオンやイオンスタイル)でも30年度の達成を見込む。

 J.フロント リテイリングは50年までにCO2実質ゼロを達成する方針で、まず30年までに17年に比べて60%削減を目指す。旗艦店の大丸心斎橋店(大阪市)などで先行して使用電力を全量再生エネに切り替えており、他店も順次転換する。

 イオンの吉田昭夫社長は「事業戦略そのものにGX、グリーントランスフォーメーションを導入する」と語る。同社は1200万本を超える植樹活動を30年にわたって行っており、この間では「サステナビリティ基本方針」や「環境指針」を掲げて、脱炭素社会の実現や資源循環の促進に取り組んできた。既にCO2排出削減では「イオン脱炭素ビジョン2050」の取り組みが進んでいる。

 ショッピングセンター(SC)と大型店で先行して30年までに店舗が年間で使用する電力71億キロワット(20年度)の50%で実現する中間目標を7月に示しており、さらに50年までとしていた店舗が排出するCO2をゼロにする目標を40年に前倒しすることも想定する。

 セブン&アイが11月に大阪府松原市に開業した大型商業施設「セブンパーク天美」。スーパーマーケットの「ライフ」が初出店するなど注目すべき点は多いが、特に目立つのが環境への配慮だ。国土交通省のサステナブル建築物等先導事業に採択。具体的には、館内で発生した生ごみを発酵させ、発生したメタンガスを電気と熱に変換して館内で利用する「バイオガス発電システム」を導入した。ごみの量では1日当たり約1トンの削減効果、発電量では年間で住宅35軒の電気量消費分相当の約17.5万キロワット時を目指すという。

 太陽光発電や最新のエネルギーマネジメントシステムにより、CO2の排出は従来比で40%削減。さらに過去の実績データや天気予報をもとに、エネルギー負荷予測、運転計画を最適化するシステムも導入した。