事業ポートフォリオ転換で環境変化に対応する

 最後に、木藤氏は出光興産の事業戦略やポートフォリオ転換に向けた構想を話した上で、DXを念頭に置いた取り組みを紹介する。

 同社の事業ポートフォリオは燃料油・基礎化学品、高機能材、電力・再エネ、資源であり、それぞれ上図の項目を重点的に推進する予定だ。その中でも注目すべきは、燃料油・基礎化学品セグメントにおける「CNXセンター」と「スマートよろずや」というコンセプトだ。

 CNXとは「カーボンニュートラルトランスフォーメーション」を指す出光興産独自の概念だ。この先、見込まれる需要減に先んじて製油所・事業所の体制見直しや精製と化学のインテグレーション深化、固定費の圧縮を進めるとともに、コンビナート全体でのCNXセンター化を推進するというものだ。

 その核となるCNXセンター構想とは、製油所の設備や技術、人材などを生かして、 低炭素資源のエネルギーへの転換や廃プラスチックのリサイクル、 再生可能エネルギーによる発電でCO2の削減などを行う設備に変革していこうという考えだ。CNXセンター化により、エネルギーや素材の環境負荷を減らし、カーボンニュートラルの実現を目指す。

「スマートよろずや」は、全国およそ6300カ所のサービスステーションなどの出光興産のネットワークを活用し、地域の生活者の便利で豊かな暮らしを支える、さまざまなサービス提供の拠点にしようというもの。具体的には、次のようなサービスを予定している。

・出光興産と、電気自動車(EV)の製造および販売を行うタジマ モーターコーポレーションが出資して「出光タジマEV」を設立。超小型EVの開発・生産や、地域の交通課題の解決に資するモビリティサービスを展開。
・自立支援型デイサービスの直営・フランチャイズによる店舗展開を目指し、デイサービス事業を行うリハコンテンツと資本業務提携。介護事業を行うQLCプロデュースの子会社化を通じて、特約販売店の土地・建物でリハビリやデイサービスの運営を行う。

「こうした多様なサービスを、デジタルの活用で連携させ、より便利で使いやすいよろずやを目指していきます。また、DXを念頭に置いたイノベーティブな取り組みを実現するための人材育成の場として、3つの塾を開講します。スマートよろずや実行・推進のために人材を育成する『スマートよろずや塾』、カーボンニュートラル、CNXを実現するための人材を育成する『CNXセンター塾』、そして、出光のイノベーションに関する風土醸成、新規事業創出を実行できる人材を育成する『ビジネスデザイン塾』の3つです。これらの人材育成の場も出光興産の変革の一環として、同時並行で取り組んでいきます」

 同社は以上の具体策を通じて2030年ビジョンを実現し、上図のようなポートフォリオ転換を進める予定だ。

 エネルギーやマテリアルのトランジションにより、化石燃料・基礎化学品事業を次世代燃料・マテリアルやサーキュラー(循環型)ビジネスに転換。また、これまでのガソリンスタンドを拠点とした超小型EVや、ライフサポートなどの取り組みによって「スマートよろずや」のコンセプトを実現させ、次世代モビリティ&コミュニティ分野の成長を目指す。

「不確実性の高い経営環境の中でも、人が育っていれば、将来の従業員たちがその時代を切り開いていくに違いありません。利益を上げるための手段として人を育成するのではなく、人の成長を重視して事業を営むのが当社の在り方です。従業員が安心してチャレンジできる強固な経営体質を維持し、人が成長する企業にしていくことが私の役割です」

 2030年ビジョンである「責任ある変革者」を目指すために、そしてその原動力となる人材の育成のために、同社のDXは推進されている。