G7の報告書
このような状況のもと、G7は10月14日、「リテール中央銀行デジタル通貨に関する公共政策上の原則(Public Policy Principles for Retail Central Bank Digital Currencies)」と題する文書を公表しました。この文書は、一般の人々向けに発行されるCBDCが満たすべき13の原則を掲げたものです。
この文書が最初に述べている通り、G7の国々はいずれも、現段階ではCBDCの発行を決めていません。それにもかかわらず、この文書をあえて公表した理由としては、以下が考えられます。
まず、CBDCにメディアの過度の期待が集まりやすい事です。例えば、最も早くからCBDCの検討を始めたスウェーデンは、検討開始から5年が経過してもなお、CBDC発行の是非を決めていません。それだけCBDCには難しい論点が多いということなのですが、そうした論点を対外的にも説明することで過度な期待を牽制することが一つの目的として考えられます。
もう一つは、G7以外の国々への牽制効果です。CBDCの発行は、G7に代表される、既存の銀行システムが発達した先進国ほどハードルが高くなります。「現状きちんと機能しているシステムを敢えて変える必要があるのか」という話になるからです。逆に言えば、G7以外の国々で、むしろ検討が早く進む可能性があるわけです。
G7としての原則を決めるだけなら、決めた原則を自分たちだけで共有すれば良いはずです。これを敢えて外部に公表したことは、やはりG7以外の国々にもこの原則を意識してもらう意図があると捉えるのが自然でしょう。実際、この文書は、「これらの原則は、G7 のみならず、その他の法域におけるリテールCBDCの検討の指針や情報を与えることができる」と記しています。