「DX魔のデッドロック」を抜け出す3ステップの解決策

 DX魔のデッドロックから脱却するには、将来、どのようになっていなければならないのかをまず定めよう。その上で、その実現のためのステップを理解し、取り組んでいく。実は、それがデジタル/フィジカル/ヒューマンの3つの領域の課題を解決することにつながっていく。

〔ステップ1〕DXで目指す姿を「Smart Factory of the Future」に据える
 弊社が提唱するものづくり産業の未来像として「SFoF(Smart Factory of the Future)」という考え方がある。人口減少に対して生産性向上を進めていき、ESG時代に適した作り過ぎないものづくりの将来像までの道筋を示したものだ。

 それはこうだ。まずはデータ収集や見える化から始め、そのデータを用いて統計的に将来を予測し、シミュレーションしながら次第にデータを高度に活用する現場を作る。併せてシミュレーション結果から工程のどこをロボット化すればよいのかを判断して導入しつつ、たまったデータを使った新しいサービスビジネスにも進出することを狙う。そして、その延長として、需要に応じて柔軟に生産能力を調整するサービスとしてのものづくり「Factory as a Service」を目指すのだ。

〔ステップ2〕次にデータを収集し、見える化を行う
 とはいえ、いきなりこの7つのステップを一足飛びに越えていくことは非常に難しいし、複数のステップを同時並行でできるわけでもない。

 まずは現場でどのような状態で操業が行われており、どのような課題が発生しているのか。その分析のための基礎情報となる現場の稼働データを収集し、それをビジュアルに可視化することから始めよう。

 そこから、発生している課題をどうしたいのか。仮説を立てた上で、どうやってデータを収集するのか、IoT等の仕組みをつくるのかを考えるわけだ。

 やみくもに全部のデータを取ろうなどと考えてはいけない。エラー率・トラブル率が少ない箇所ではあまり有意な判断につながるデータ取得とならないため、課題の多いところを重点的に把握できるようなアプローチを採るとよい。

〔ステップ3〕データを蓄積とともに目線を将来に向けていく
 そうしてデータが蓄積され始め、見える化が進んでくると、ノウハウを持った現場の人のみならず経営陣も欲が出てくる。「過去からのトラブル発生に対する傾向値はどうなんだ」「今後どうなる見通しなのか」といったトレンド推移に関する情報を欲しがることが多くなってくる。

 例えば、対前年比で今はどんな傾向にあるのかといったことはよく出る質問だ。当たり前のことだが、対前年比が言及できるようになるのはデータを取り始めてから2年目以降。つまり、データ収集による見える化は、早期に着手することが必要なのだ。

 そして、データ蓄積を続けていると過去や現在よりも目線は将来に向いてゆく。将来、起こり得る故障を予測したり、故障の予兆が見られた時点でメンテナンスを行い、故障を発生させないといったような予測する操業の姿へ変わっていくのだ。こうして次第にスマートなものづくりを実現させていく。