提供価値、出店場所、価格、個別のメッセージ、広告の配置などに活用できる
マーケティング面での応用分野について、マーケティングの代表的なフレームワーク4Pに沿って考えていく。
まず、プロダクト(商品開発)。組み合わせが多く、それによって提供価値が変わっていく分野には応用が期待できる。例えば、さまざまな素材の組み合わせによって価値が変わってくるような材料系の分野では、量子コンピューターを用いてシミュレーションを行い、最適な価値を創出する組み合わせを見つけられる可能性がある。
続いて、プレイス(出店戦略・チャネル最適化)では、出店場所ごとの売り上げをシミュレーションする機械学習モデルがあった場合に、それを使って売り上げが最大化するような出店場所の組み合わせを見つけることに応用ができる。また、本記事では詳細は割愛するが、元々の機械学習モデルを構築する際にも量子機械学習という手法で応用が期待されている。
プライス(価格設定)でいうと、ダイナミックプライシングにおいて、さまざまなパターンの価格設定が考えられる場合に、最も売り上げが最大化するような組み合わせを見つけることも可能だ。
最後に、プロモーション(広告・コミュニケーション戦略)では、膨大な組み合わせのメッセージ(文言だけではなく画像なども含め)から一人一人に効果の高いメッセージをはじき出す出すこと可能だ。また、広告の分野においては、限られた広告枠に対して効果が最大化するような広告の配置や、その際の単価計算にも応用できるかもしれない。
実際に筆者も昨年、某メディアと協力して量子コンピューターを使った広告枠の最適化シミュレーションにおける実証実験を行った。結果としては、後述する量子コンピューターの課題にも関わるが、量子ビット数の制約などから適用できる問題サイズや精度に問題があり、通常のコンピューターによるアルゴリズムの方が有用となった。しかし、技術の進歩により、今後、発展していく可能性は十分にあると考えている。
上記のようにさまざまな分野において応用が期待される量子コンピューターであるが、また別の側面でも注目を集めている。それは消費電力の削減である。量子コンピューターはその特性から、通常のコンピューターよりも使われるエネルギーは少なくて済む可能性がある。そのため、消費エネルギーの増加による気候変動への懸念が高まる今、注目を集めているのである。
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