イノベーションを左右する「自覚のない存在」に着目してほしい

 このコラムでは第1回から第4回にかけて、個人の内面に強くフォーカスをあてて、イノベーションや変革を促進したり妨害したりする要因について語ってきた。

 「やりたいこと」「自由の実感」「アイデンティティ」「認知バイアス」。これらはすべて、個人的なことであり、また人生全体に影響を与えることでもある。それでいて、自覚すら難しいことであるため、おそらく、これまで企業のマネジメントの中でも注目されてきていない。

 これら自覚のない存在に自覚を促し、自律性を発揮させるということは、いつ花開くか分からないし、会社の経営に対してどのような影響があるのか予測することはできないというのが正直なところだ。

 しかし、18年間イノベーションの促進にかかわってきて、手法や考え方、組織論は発達するのにそれでもうまくいかないとするならば、その要因は「自覚のない存在」にあるのではないかというのが私の今の結論だ。

 能力強化と違って「気付けばすぐに変われる」という可能性も秘めているし、事業環境が変わっても、自分の自律性の発揮の仕方が身に付いていれば、その都度、活躍の仕方を自分で切り開いていくことができる。

 ぜひ、イノベーションマネジメントの一つの手段として、自覚のない存在への着目に想いを巡らせてみてほしい。

コンサルタント 大﨑真奈美(おおさき まなみ)

R&Dコンサルティング事業本部
R&D組織革新・KI推進センター
チーフ・コンサルタント

技術者・研究者の企画力向上や、R&D組織革新の支援に従事している。最近は、技術者・研究者の心に火をともすことをミッションとしており「火おこし」役として日々実践・研究をしている。2児の母。カウンセラー資格を持っている。