知らないうちに持っている、自分自身へ思い込み

 「自分に対してどんな思い込みを持っているか」と尋ねられてもピンとこない方が大半だろう。それだけ日常的には意識しない観点だが、実は思い込みは自分のパフォーマンスに大きな影響を与えている。

 私が認知バイアスの存在を知ったのは、カウンセラーの修行をしていた時だ。たとえば、私自身には「受け取った恩は返さないと恩知らずと言われて嫌われる」という、自分自身に対しての思い込みがあったが、自覚はしていなかった。

 また、それまで比較的、自分自身は誰に対しても思ったことを言葉にして伝えているつもりだったが、それでも「与えられた仕事を断る」ということに関連することだけはどうしても言えておらず、「断れない」ことを相手のせいにしていた。

 何がやっかいなのかというと、相手は「事情があるなら『できない』と言ってくれてもいい」と思っているのに、私自身は「相手のせいで断れない」と思っているので、不信感につながり、業務への意欲が低下し、イノベーションなどもっての外、という認識につながっていってしまうのである(実際に、この時期は私の意欲はかなり低下していた)。