シンガポールに本部を置く調査会社カナリスによると、音声認識人工知能(AI)「Alexa(アレクサ)」を搭載するアマゾンのアシスタント端末「Echo(エコー)」シリーズの年間販売台数は3500万台以上。スマートスピーカー市場におけるシェアは2年連続して30%を達成している。また、米調査会社のパークスアソシエイツによると、アマゾンの動画ストリーミング端末「Fire TV」は北米市場で米ロク(Roku)に次ぐ2位だという。

 アマゾンは21年9月、自社開発したテレビを米国で発売すると明らかにした。アレクサを搭載し、 番組切り替えなどの操作が音声命令でできるというものだ。このテレビは動画ストリーミング端末の成功があったからこそ生まれたとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘している。今回アマゾンが発表した新製品がヒットすれば、今後の新たな商品開発につながる可能性があるという。

「サービスと密接統合のハードウエア」

 アマゾンのハードウエア製品は、その売り上げをはるかに超える効果をもたらすとも同紙は指摘している。アマゾンはKindle端末をきっかけに電子書籍事業を立ち上げた。その規模は現在、米国だけでも年間10億ドル(約1100億円)以上に上る。また、スマートスピーカーのEchoは音楽配信サービス「Amazon Music」の利用者増に寄与している。米投資銀行エバコアISIによると、Amazon Musicはスウェーデンのスポティファイ・テクノロジーに次いで人気がある音楽サービスだという。

 「アマゾンの狙いはハードウエア製品そのものの売り上げではなく、サービスと密接に統合されたハードウエアを開発することだ」と、同社デバイス&サービス部門担当デービッド・リンプ上級副社長は述べている。同社の21年4~6月期におけるサブスクリプション(サブスク、継続課金) 型サービス事業の売上高は前年同期比32%増の79億1700万ドル(約8800億円)だった(決算資料)。

 現在、同社のサブスク年間売上高は約290億ドル(約3兆2200億円)。この金額は22年末にも400億ドル(約4兆4500億円)近くにまで達するとウォール街のアナリストらは予測しているという。