「仕事の質の良し悪しをどう見ていいのか分からない」シンドローム

 ところが実際には、質の判断を放棄して(あるいは判断ができず)、売上高の側面だけで仕事のアサインを決め、人事評価するマネジャーもいる。「もっと売り上げの大きい仕事をしてよ」ということしかメッセージできないマネジャーである。

 プロフィットセンターには、偏西風のようにいつも「売り上げを上げよう」という風が吹いているもので、そんなことは、言われなくもメンバーは分かっている。マネジャーはその偏西風と同じ方向の風を吹かせるのが役割ではない。偏西風とは異なる軸の風を吹かせるのがマネジャーの仕事である。

 「売り上げは低いかもしれないが、将来に向けて重要な仕事だから、これをやろう」ということを諭していくことこそが、判断力あるマネジャーの責務である。「今さえよければいい」「当面、食いはぐれなければいい」という発想はよくない。

 マネジメントの重要な仕事は、日々の仕事に追われるがまま、流されるがままに、降ってきた仕事をこなすのではなく、改めてどういう仕事を重視していくべきかの議論をする場を持つことだ。

 自分たちに仕事の選択権があるということを自覚すること、文字通り、"自律"することが大切である。そのために、ときどき自分たちの仕事についてのビジョンを語り合うような場を持つように"しかける"ことがマネジャーのなすべきことだと思う。

 あなたの職場は、そのような場・機会があるだろか。よく考えてみてほしい。

コンサルタント 塚松一也 (つかまつ かずや)

R&Dコンサルティング事業本部
シニア・コンサルタント
全日本能率連盟認定マスター・マネジメント・コンサルタント

イノベーションの支援、ナレッジマネジメント、プロジェクトマネジメントなどの改善を支援。変えることに本気なクライアントのセコンドとしてじっくりと変革を促すコンサルティングスタイル。
ていねいな説明、わかりやすい資料をこころがけている。
幅広い業界での支援実績多数。