課題先進国なのに欧米と比べて対応が遅れている日本
G3ictは、障害者権利条約批准国がデジタル・アクセシビリティにどの程度対応しているかを評価する指標“DARE”を公表している(G3ict:Global Initiative for Inclusive Information and Communication Technologies)。
障害者差別禁止等の法律等の整備状況や、政府における専門組織等の体制の整備状況、ウェブ等におけるアクセシビリティへの対応状況をもとに算出されたものである。この指標において、日本の評価は36点/100点満点で、世界75位であった。アメリカは71.5点、欧州諸国を見てもフランス72.5点、イギリス66.5点、ドイツ62.5点となっており、先進国の中でもかなり低い点数である ※。
日本は課題先進国と言われ、その中でも高齢化は最も大きな課題である。高齢化は、加齢による体力の低下だけでなく、視力や聴力の低下を伴うことも多く、情報アクセシビリティへの対応が喫緊の課題と言えるだろう。しかし、日本は欧米と比較して、情報アクセシビリティへの対応が大きく遅れているのが現実である。
アメリカではICT機器・サービスを政府機関が調達する際には情報アクセシビリティを確保していなければならないとの法律(リハビリテーション法508条)を定めている。EUはICT製品およびサービスの公共調達に適したアクセシビリティ要件に関する欧州規格を策定し、EU加盟国はこの規格に則って各国法を制定することとなっている。
アメリカでは、企業や行政機関が提供するICT機器・サービスが情報アクセシビリティに対応していないことで訴えられた事例も多くある。AppleやMicrosoftに代表されるアメリカ企業は、20年以上前から、情報アクセシビリティへの対応は企業として取り組むべき事項であると考え、実践してきた。
これに対して、日本の企業では情報アクセシビリティ対応は他機能とのバーターとして取り扱われることが依然として多く、企業がその重要性を認識しているケースは少ない。また、行政機関においても、行政が提供するホームページやアプリケーション、キオスク端末等の情報アクセシビリティへの対応は不十分と言える。
※ Digital Accessibility Rights Evaluation(DARE)Index 2020をもとに記載