人的資本に関する情報開示の方向性
以上に述べたタレントマネジメントの検討ステップは、「人的資本の側面から語る価値創造ストーリー」そのものである。
・わが社が事業を通じて生み出す価値はなにか
・その価値を生み出す源泉となるビジネスモデル上の強みはなにか
・強みを支える組織機能はなにか
・組織機能を担うのはどのような人材か
・そうした人材を確保するために行っている取り組みはなにか
タレントマネジメントの検討を経ることで、これらが一貫性あるストーリーで語れるようになるのである。
そして、それは同時に、人的資本の情報開示において「なにを開示するか」を見いだすプロセスでもある。
人的資本の情報開示については国際規格であるISO30414に準拠した形で対応しようと考えている会社は多いと思われる。その場合にISO30414に示された項目すべてを開示する必要はなく、またそうすべきでもない。
大事なのは自社の人材戦略に沿って重要な項目を開示することである。その意味で「なにを開示するか」は各社各様になることを前提とした上で、タレントマネジメントの観点からは、重要ポジションやタレントの量や充足状況、充足度に影響を与える要因(離職や採用など)に関する情報が開示の対象となるだろう。