外部決済、利用者の利便性低下

 また、利用者が外部決済に抵抗感を持つ可能性もある。利用者は大幅値引きなどのメリットがない限り、アプリをいったん離れて外部のシステムで手続きしようとは思わないという。利用者はアプリごとに異なる決済システムにアクセスし、毎回クレジットカード情報を入力しなくてはならない。グーグルやアップルのアプリ内決済を利用した方がはるかに楽という状況が生まれるという。

 韓国での法成立を受け、グーグルとアップルはそれぞれのアプリストアにどのような変更を加えるかを明らかにしていない。ロイターによると、グーグルの広報担当者は「高品質のOSとアプリストアを支えるモデルを維持しながらこの法律をいかに順守するかを検討する」と述べた。アップルは「アプリストアでの購入に対するユーザーの信頼性は低下し、これまでアップルで8兆5500億ウォン(約8140億円)以上の収益を得た韓国の48万2000以上の登録開発者の機会が減る」と述べている。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、今後グーグルとアップルは新法に順守して外部決済の利用を認める見通し。だが2社は、課金手数料収入の減少を補う目的で新たな手数料を課す可能性もある。2社が、外部決済を選択した利用者に対する大幅値引きや特典の付与を禁止する可能性もあると、アナリストは指摘しているという。

「サイドローディング」「競合アプリストア」禁止

 韓国の新法はアプリ決済利用の強制に焦点を当てたものだが、米国などで検討されている法案はさらに踏み込んだものだ。

 例えばアップルは、スマートフォン「iPhone」など同社製モバイル機器向けアプリを自社アプリストア「App Store」以外で配信することを認めていない。米議会下院の超党派議員が21年6月に公表した「プラットフォーム独占終了法」と「オンラインにおける米国人の選択と技術革新法」が成立すれば、正規ストア以外からインストールする「サイドローディング」を同社が認めざるを得なくなる。また、アップルはiPhoneなどに競合アプリストアをインストールすることも禁止している。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、米議員などはこうした禁止事項をプラットフォーマーによる影響力の行使とみて問題視しているという。

 (参考・関連記事)「韓国でアプリ決済の強制禁止法成立、世界初 | JDIR