生産性向上を早期に実現するための処方箋

 生産性向上に取り組み始めると、生産量が増えない限り、人や設備のリソースを削減する活動になる。日本と同様に生産性向上=人・設備の削減とならないように活動を進める工夫が必要だ。

 生産性向上を実現することの意義、タイ人にとっての必要性などを事前に検討しておくことが重要である。少人化や配置人員削減などを狙う場合は特に注意が必要である。

 また、人にしても設備にしても、生産性を管理する指標の意味を正しく理解してもらう必要がある。指標を取ることが目的ではなく、その指標を見て「改善すべき点を明確にする」「現場で事実を確認する」「改善を推進する」「結果として指標が変わる」という改善のサイクルを定着させる。

 指標だけを見て直せというのは、よほどできる管理者でなければ通用しない。意味を教え、改善の着想を与えるということを管理者のレベルに応じて実施することが重要である。

 改善を進めるときは、改善そのものを日々の仕事に組み込んでいくとよい。日々の管理業務+改善業務という認識ではなく、改善業務が含まれる管理業務にしていくべきである。改善業務を追加業務にしてしまうと一過性の取り組みに終わることが多い。

 このような取組みを通じて、生産性を向上できる人材が育つとともに、改善できる人が管理者になっていくような組織づくりが必要かもしれない。

コンサルタント 角田賢司(つのだ けんじ)

生産コンサルティング事業本部
プロセス・デザイン革新センターセンター長
兼 デジタルイノベーション事業本部 シニアコンサルタント

IEをコア技術として収益向上のコンサルティングに取り組んでいる。自動車(部品)、化学プラント、樹脂成型、建材、食品等、多業種で収益向上の支援を実施。現場の生産性向上、品質向上、調達コストダウンや在庫削減等複数テーマを同時に展開、マネジメントの支援を行う。近年はタイ・中国等の製造拠点支援として生産性向上や品質向上の成果実現と併せ、マネジメントの仕組みづくり、ローカル人材育成を実践