旅客機の客室乗務員(キャビンアテンダント、CA)の研修で、デジタル改革が進んでいる。センサー、動画、「ローカル5G」などのデジタル技術を活用して、CAのトレーニング内容の高度化と効率化を狙う、全日本空輸(ANA)の例を紹介する。
ANAは2020年秋からCA研修のデジタル変革の可能性を検証し、成果に手ごたえをつかめたとして、2021年3月で試行を終了。今後実用に向けての開発に取りかかる。検証を行ったのは、同社が2019年4月に運用を開始した東京都内の総合トレーニングセンター「ANA Blue Base(ABB)」だ(敷地面積約3万m2)。
ここでの注目点は、施設内に設置した「ローカル5G」ネットワークだ。ローカル5Gは、通信大手が展開中の5Gサービスとは別に、企業や自治体が5Gのネットワークを自営するもの。今年秋以降にもローカル5Gの商用通信環境をABBに常設する予定で、ローカル5Gの活用領域の拡大や投資対効果を詳細に詰めていく。
さらに、訓練・教育・研修の拠点であるABBを「ローカル5Gの通信環境を常設したオープンイノベーションの拠点として活用できるようにしたい」(デジタル変革室イノベーション推進部の永留幸雄担当部長)という構想を持っている。たとえば、ローカル5G対応デバイスの開発にABBをテストフィールドとして使えるようにするなど、デジタル技術に積極的なスタートアップなどの企業との共創拠点にしていこうというのだ。ローカル5Gの通信環境を自社の施設に常設して外部企業との共創に役立てる取り組みは珍しい。
センサーデータや動画から評価を即時にフィードバック
ANAがABBで行った実証実験の一つが、CAの機内サービスのトレーニングである。