「自営5G」(第5世代通信)と水中ドローンを養殖業で利用する試みが始まった。水中ドローンで撮影した高精細映像のリアルタイム転送を行うために、転送速度と指向性をカスタマイズした5G(ローカル5G)を使う点が目新しい。
海中のデータ収集が容易に
実証実験を行うのは牡蠣の養殖だ。海中に吊るした牡蠣の生育状況、牡蠣の付着物、牡蠣の周辺の浮遊物の様子などを水中ドローンの高精細の映像で撮影する。さらに、水中ドローン搭載のセンサーで、牡蠣の生育に影響が大きい海水の温度や塩分濃度、海水に溶けた酸素量などを測定し、海中の状態を多面的に可視化する。
水中ドローン(市販製品を利用)は、養殖場に浮かべた船上の機器とケーブルで接続されている(図1)。5Gネットワークは、ドローンのデータを船上から陸上へ送信するほか、陸上から水中ドローンを操縦するのにも利用する。
これまで牡蠣の養殖場では、ダイバーが潜水して海中の様子を確認していたが、5Gと水中ドローンを活用すれば、この作業が不要になる。
また、海中の環境は限られたエリアでサンプリングしたデータから推定するしかなかった。養殖場全体の環境データを水中ドローンが収集すれば、牡蠣の大量死につながりかねない海中環境の変化を的確に捉えられるようになる。
この取り組みは総務省の委託事業で、経営コンサルティングのレイヤーズ・コンサルティング、東京大学、NECネッツエスアイ、NTTドコモが2021年1月25日に開始した。国内有数の牡蠣の産地として知られる広島県江田島市の養殖場で2月半ばまで実施する。