各国の取り組み

 現在、各国が貿易取引の分野で行っているデジタル化の取り組みは、概ね同じ狙いに基づいています。貿易に関連するあらゆる書類をペーパーレス化し、ブロックチェーンや分散型台帳技術を用いて、関係者が常に共有できるようにすること。さらに、スマートコントラクトを活用し、さまざまな事務処理が連携して自動的に行われるようにし、取引の効率化を実現することです。

 代表的なプロジェクトとしては、香港の「イートレードコネクト」、欧州の「ウイトレード」などが挙げられます。WTOは2019年の報告書において、世界中で行われている39のプロジェクトを紹介しています。

貿易取引のデジタル化プロジェクト(注:WTO資料より)
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 例えば中国では、中央銀行である中国人民銀行が、“PBCTFP(People’s Bank of China Trade Finance Platform)”を設立し、貿易金融へのブロックチェーン・分散型台帳技術の活用に取り組んでいます。この、4つのブロックチェーンのアプリケーションから構成されるプロジェクトには、48行の銀行を含む数多くの企業が参加しており、取引のボリュームも着実に伸びていると報道されています。「デジタル人民元(e-CNY)」の開発を行っている中国人民銀行のデジタル通貨研究所が、このプロジェクトで用いる分散型台帳技術の開発も担当しています。また、香港の「イートレードコネクト」との共同研究も行っています。中国のデジタル化といえば、とかく「デジタル人民元」に関心が集まりがちですが、人民元のプレゼンス拡大という観点からは、この分野の取り組みも注目されるべきでしょう。