(3)「バレーパーキング」自動化の運用を進める

 ハリウッド映画でよく登場するように、米国ではホテルやレストランの入り口に専任の担当者が待機しており、顧客から自動車とキーを預かって専用のパーキングに駐車する「バレーパーキング」と呼ばれる方式が一般的だ。2020年にボッシュがフォードなどと共同してデトロイトで行った実証実験では、道路側に設けられたインフラを利用、自動運転でパーキングが可能であることが確認された。人力によるハンドルやアクセルの無駄な操作がなくなればエネルギーの節約にもつながるだろう。今後は空港のパーキングなどでの展開も期待されている。

(4)電気自動車のバッテリー寿命を伸ばす充電ソリューションを提供する

 電気自動車のバッテリーの状況をクラウドに常にアップロードし、個別の車両に最適な充電方法を採用する仕組み「バッテリー・イン・ザ・クラウド」も紹介された。読者の皆さんもスマートフォンの充電で経験されている通り、電気自動車でも急速なフル充電を繰り返すとバッテリーの劣化が早くなるという厄介な問題が発生する。ボッシュのシステムではバッテリーの状態をクラウド側から監視することにより、その充電量やスピードを調整することでバッテリーの寿命を伸ばすことが可能になる。

電気自動車の充電ソリューション「バッテリー・イン・ザ・クラウド」(出所:Bosch CES 2021 Press Conference)

(5)自動運転車専門のソフトウエア開発組織を立ち上げ、開発のスピードを上げる

 ボッシュは「AIoT」と呼ばれるAIを活用したIoTの導入にも積極的に取り組んでおり、同社の工場で活用が進んでいる。ドイツのハンブルグ工場のクラウドベースのエネルギープラットフォームでは2年間で10%のCO2削減の実績をあげている。効率化に伴うスピードアップもサステナビリティに貢献するのだ。ボッシュが開発した新型コロナウイルス用のPCR検査機器「Vivalytic」は5つの検体を同時に検査し、2.5時間以内に検査結果を出すことができる。また加速的に増大する自動運転のソフトウエアコード開発に対応するため、1万7000人のエンジニアからなる「クロスドメイン・コンピューティング・ソリューション事業部」を立ち上げ、電気自動車をベースにした自動運転におけるソフトウエア開発の効率化とスピードアップを図る。

「気候変動の課題」を乗り越えるボッシュの「AI倫理指針」

 プレゼンテーションの終盤ではボッシュの「AI倫理指針」、つまりAIの活用に関して倫理的なレッドライン(超えてはいけない一線)についての再確認もなされた。AIとCO2の削減は一見、距離が遠いように感じてしまうが、ボッシュではAIの活用で膨大なデータの分析から論理的な意思決定を行うことが可能になり、交通、医療、農業など多くの分野で最適なソリューションを実現することを通じて、直接、間接を問わず「気候変動の課題」を乗り越える一助となる、というポリシーを表明している。

自動運転ではセンシング、ドライブ、ナビゲーション、エンターテインメントなど様々な分野でAIの活用が不可欠になるが、人間がコントロールを維持することが原則になる(出所:bosch.co.jp)

「AI倫理指針」は実は2020年2月にベルリンで行われたボッシュのIoTカンファレンス「ボッシュ コネクテッドワールド」(BCW)を機に策定されたガイドラインである。ボッシュは2025年までに全製品にAIを搭載する、または開発や製造にAIを活用することを目指しているので、その活用に関するガイドラインを定めることは事業の成功のみならず、社会的な信頼を勝ち取るためにも極めて重要になる。

 ちなみにボッシュ コネクテッドワールドのオープニングでボッシュCEOのフォルクマル・デナーは「AIを用いたボッシュ製品に対する信頼を得ることが、私たちの使命です」と述べている。