NTTの「IOWN」は世界を見据えた技術展開であり、毎年、CESが開催されているラスベガス市におけるスマートシティ化への取り組み(公共安全ソリューション)が知られている。CESのように多くの人が集まるイベント会場や市街地などにおける群衆の動き、交通状況、緊急事態の発生などを把握し、プライバシーに配慮しながら市民の安全を守ることは自治体、警察、消防など市当局にとって喫緊の課題となっている。このような状況を踏まえ、NTTグループはデル社と協力してラスベガス市の街区に高解像ビデオカメラ、音響センサ、IoTデバイスを配備し、現場状況の把握に役立つ各種情報を収集・分析していると言われている。
仮にCES 2021が通常通りのリアル開催であれば、「IOWN」ソリューションの目玉であるラスベガス市での取り組みをプレゼンテーションで効果的に取り上げ、世界に向け、よりインパクトの強いアピールができたのではと思うと残念な気がしてならない。
EVへの「なりわい」革新を鮮明にしたGM
CESの場において基調講演は、企業のトップが「ビジョン」(ありたい姿)を熱く語り、夢を見せるための場所である(したがって新製品の紹介を羅列する講演は最悪の評価になる)。
そういう意味でCES 2021で人々の記憶に残る基調講演を行ったのはゼネラルモーターズ(GM)の会長兼CEOのメアリー・バーラである。GM叩き上げであり、GMの社内大学で電気工学を専攻したメアリー・バーラは、コロナ禍でも地球温暖化による気候変動という社会課題に向き合い、ラインナップの完全電動化の移行を目指し、すべての人がEVに乗ることでその解決策の一端を担いたいとかねてから表明している。そして、CES 2021の直前のタイミングで、伝統的なGMのロゴマークから電気プラグを連想させる新ロゴへの変更を発表(この記事の冒頭の写真参照。これからゼネラルモーターズは小文字でgmと表記すべきか?)したことも極めて戦略的に映る。
基調講演の前半では、
・2025年中に全世界で30車種のEVを投入し、3分の2以上を北米で販売。キャディラック、GMC、シボレー、ビュイックのすべての価格帯にEVをラインナップする
・ガソリン、ディーゼル車開発を上回る270億ドル(約2兆8千億円)を計画中のEVおよびAVに投資する
・2020年代半ばまでに「アルティウム」(Ultium)バッテリーパックの現行比60%のコストと2倍のエネルギー密度の実現を目指すとともに、「アルティウム」バッテリーEVの最大航続距離を450マイルにまで拡大する
と、昨年11月末にプレスリリースした内容を改めてコミットするとともに、2021年秋にリリースされる予定の「ハマーEV」(GMC HUMMER EV)についてはスペックの詳細を、キャディラック・ブランドで初のEV、「キャディラック・リリック」(発売は2022年前半)については完全ハンズフリー運転支援システム「スーパークルーズ」の自動車線変更機能などを映像で紹介した。
また、基調講演後半においては、キャディラック・ブランドで開発が予定されているモノスペースのシティビークルや空飛ぶクルマ(eVTOL)のコンセプト映像を紹介し、B2B用途ではFEDEXが採用を決定した「EV600」と呼ばれるEVトラックや、EV600に搭載され、配達員を自動追従するデリバリービークル「Bright Drop」をお披露目した。
自動運転についても、子会社のクルーズ・オートメーション(Cruise Automation)がサンフランシスコのサンセット地区で、シボレー・ボルトEVをベース車として完全自律走行の実証実験を行った映像を上映し、同州で自動運転車のテスト走行を行っているライバル企業のグーグル系のウェイモ(Waymo)、アマゾン系のズークス(Zoox)とともに高いレベルにあることを示した形になった。
(参考)GM傘下クルーズ・オートメーションの自動運転の実証実験
https://www.youtube.com/watch?v=Pa7xU7PW-oM&feature=emb_logo
GM以外の基調講演、CES 2021の基軸を示したMS
ゼネラルモーターズ以外の主な基調講演のアウトラインと筆者の率直な感想は以下の通りである。