変化に強い生産管理、ものづくり現場とは

■S & OPによる中長期マネジメント

 変化に強いものづくり現場に重要な観点は、まず中長期マネジメントの視点である。その代表的な取り組みとして、S&OPが挙げられる。S&OP(エスアンドオーピー:Sales & Operation Planning)とは、事業戦略に適合した最適オペレーションを実現するために、事業ユニット/サプライチェーンユニット単位での財務評価に基づき、事業/販売計画とサプライチェーン計画の整合性を図る統合計画である。

 中長期経営計画や予算段階でサプライチェーン構造の見直しやストックポイントの再構築などを判断し、対応を含めた戦略的在庫保有や生産・在庫拠点の分散化、内外作編成の再設計など、ものづくりにおける基本構造自体を中長期的な視点から見直すことが重要である。

 そしてさらに、中長期マネジメントに連動させて、短期マネジメントのスピードも上げていく必要がある。

■MESやIoT活用による短期マネジメント

 短期マネジメントでは、実績データ、需給予測データなどデータを用いてシミュレーションを行い、その結果を踏まえ、リアルタイムに意思決定し、生産・調達に反映させる。

 最近では、リアルタイムに実績収集を行う仕組みとして、MES(エムイーエス:Manufacturing Execution System、製造実行システム)やIoT(Internet of Things)が注目され、ものづくりの現場で生じている問題や出来事を迅速に把握し、製造実行システムとして、製造工程の可視化や管理、作業者への指示や支援などを行う情報システムとして活用が進んでいる。IoTについては、今後さらなる発展も期待されており、工場全体、サプライチェーン全体がデジタル化され、デジタル上でのシミュレーションや問題解決により、改善スピードを劇的に上げる効果も期待できる。

 ただし、これらのデジタル技術を有効活用するためには、生産管理に関連する基準情報の整備、運用、メンテナンスの取り組みが重要である。例えば、生産計画に使用している計画標準は、生産試作、生産準備段階での評価に基づき、生産技術部門で初期設定するケースが一般的であるが、それらの精度が低いと、無理な生産計画が立案されることになり、結果として計画通りに生産できない。このように、デジタル技術を活用するためには、それらの基盤となるルールや運用の徹底が重要であり、デジタル化を進める上での前提条件となることは言うまでもない。

 これからの変化を乗り越えていくためにも、最新のデジタル技術を活用し、スピード経営を実現する現場づくりをぜひ目指してほしい。

コンサルタント 茂木龍哉 (もぎ たつや)

サプライチェーン革新センター センター長
シニア・コンサルタント

生産、物流機能領域を中心に、在庫適正化、生産管理システム導入、コストダウンなどのコンサルティングを行う。サプライチェーンマネジメントの視点から、現場改善から経営改革に至るまでの幅広い場で改革・改善活動を支援。製造業の人材育成にも積極的に取り組んでおり、自律的継続的改善ができる職場づくり、そのための教育プログラム開発など数多くのプロジェクトに参画。主なコンサルティングテーマは「生産管理システムの設計・再構築」「在庫削減のための改革立案および実施支援」「現場の生産性向上・製造原価低減余地診断」「物流コスト低減のための3PL業者選定支援」「SCM改革の基本構想立案」など。共著に『物流改善ケーススタディ65 コストダウン、作業効率を徹底追求』『続・物流改善ケーススタディ65 コストダウン、作業効率を徹底追求』(いずれも日刊工業新聞社)、『図解 ビジネス実務辞典 生産管理』(JMAM)、『生産管理のべからず89』