生産技術開発を推進する会社は設備の内製化比率が高い

 生産技術開発を推進している会社の生産設備の内製化比率が高いのは、その工法を実現する設備が一般販売されていないために内製化していると理解すべきである。

「内製化」は幅広く捉えてよいだろう。例えば、汎用設備を購入して改造したり、独自性あるデバイスや治工具を付加したりすることも、内製化として定義しても差し支えない。いずれにしても、汎用設備や設備メーカーの導入した設備をそのまま使用するのではなく、自社の独自の工夫を入れて使用していることを「内製化」と理解してよい。

 これまで見てきたように、生産技術のより良い未来にはやはり内製化比率が高いと独自の生産技術を生み出すことができ、競争力を高めることができるという方程式が見えてくる。

 昨今、コンサルティングの現場で思うことに、生産技術の仕事の定義が変わっていることに驚くことがある。例えば、汎用設備や設備メーカー推奨の設備を導入し、流れのよいレイアウトに配置して立ち上げることが生産技術の仕事だと思っている会社が増殖し、付加価値が出せず、競争力をなくしていることが残念ながら散見される。確かに生産準備を行い、量産を滞りなく迎えることも大切であるが、他社も買うことができる設備をそのまま使用して競争力が上がるだろうか。

 答えはノーだ。汎用設備を購入するのであれば、その加工・動作スピードを格段に上昇させるなど、チューンナップした状態で活用しないと競争力がないのである。生産事業で競争していない事業体では、このようなことを行う必要はないが、生産事業が競争下にある事業体の場合は必要である。

 とある会社でこのようなことを述べると、「設備メーカーの保証がなくなってしまうが、大丈夫だろうか」と生産技術部長が質問してきた。「限界を超える運転をして壊れなくするのが『技術』である」と返答したら、キョトンとされたことがある。

 これらは競争力がなくなっている生産技術部門によくある話だ。仕事の内容が設備メーカーの言いなりで、設備を手配するだけの「カタログ・エンジニア」の人口が増えてくると、生産技術部門の価値が下がってくるのである。逆に自社で設備開発を行い、生産性で何倍もの差をつけている会社では、特にコア技術については「工夫していない設備は一切ない」と言っても過言ではない。

 生産技術としていかにレベルの高い設備を使っていくか、技術のイノベーションを自ら起こし、いかに断トツの競争力を生むか。生産技術の仕事の価値について見直してみてはいかがだろうか。

 このコロナ禍の期間に、生産技術を中心にものづくりの内力を高め、次なる競争力をつけていくことが重要な活動と考える。

コンサルタント 石田秀夫(いしだ ひでお)

取締役 生産コンサルティング事業本部 本部長 
シニア・コンサルタント

大手自動車メーカーに入社し、エンジニアとして実務を経験。生産部門および開発設計部門のシームレスな収益改善・体質改善活動を支援。事業戦略・商品戦略・技術戦略・知財戦略を組み合わせた「マネできない ものづくり戦略」を提唱し、次世代ものづくり/スマートファクトリー化推進のコンサルティングに従事している。