野菜ジュースを製造・販売する健康食品メーカーを例に考えてみよう。カネ・モノをもとにした指標設定では、「世界中に安価で高品質な自社の野菜ジュースを届ける(販売する)」が目標となり、追求すべき項目がQCD(品質・コスト・納期)となる。
しかし、この企業の社会に提供したい価値・存在意義が「世界中の人々の健康度を向上させる」であれば、目標は「QCDを満たす自社商品・サービスの提供」からチャンクアップし、具体的な感性指標として「野菜摂取量の増加による健康度向上」などが考えられるのではないだろうか。
チャンクアップにより設定した感性指標には、以下の3つの意義がある。
(1)SDGsとのつながり
企業本来の目的や存在意義に立ち返って設定した目標は、SDGsの目標につながりやすい。先の例にある、野菜摂取量の増加による健康度向上という指標は、SDGsゴール3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」につながる。
(2)活動・部署の広がり
従来の「QCDを満たす自社商品・サービスの提供」では、関連部門は販売・マーケティング、製造などになるが、野菜摂取量の増加を指標に据えると、人事総務は自社社員の健康管理、広報は野菜のメリット普及を行うなど、部門をまたぐ広がりのある活動となる。
(3)みんなからの応援
ステークホルダーに応援されファンになってもらうためには、”自社らしさ”を象徴する理念・姿勢・取り組みが反映された活動である必要がある。
そして、感性指標がその活動の下支えとなるが、想い、共感など目に見えない価値観、つまり感性が行動選択へ影響を与える時代では、「つながる」「広がる」「応援される」の3つの意義を持つ感性指標の設定と展開が重要となる。