経営の本質は「Anything goes」

──「日本の若者よ、ものづくりの世界に来たれ」ですね。

山木:サービス、観光、金融なども大切な仕事で人気がありますが、ものづくりは何もないところから価値あるものを生み出す、つくる楽しさがあります。すべて自分たちの手の中にある。景気が悪いからどうにもならないではなく、自分たちの力でいいものをつくってお客様にお届けし、支持されれば生き残れるという自助努力ができるよさがあります。努力の甲斐があるといいますか。どの産業もすばらしいですが、私としては、やはりものづくりは楽しい、いいもんだと言いたいです。

──アフターコロナも含めて、ピンチをチャンスにするための今後の展開についてお聞かせください。

山木:各国の財政出動や経済政策にもよりますが、基本的には悪くなる要素が大きいと思います。コロナ以外にも不測の事態がさらに起こることもあり得ます。まさに、今何が起こってもおかしくない。予測できないことが起きた場合、臨機応変に俊敏に迅速に対応することが重要です。

 テクニカルな面で実際にできることは限られていますが、高い技術力がまず絶対条件です。次にお客様からの信頼、言うなればブランド力で、この2つがあればかなり強い。そして、最後の3つ目は社内がいかに結束しているか。人間関係が良好であることがとても重要です。有事に足を引っ張りあっては自滅する。この3つがそろっていればなんとかなると思います。

──景気悪化で、工場閉鎖や雇用調整など影響が広がっています。

山木:雇用を守るということが大前提であり、雇用を守れるビジネスボリュームを維持することが目標です。やりきれるかどうかの保証はどこにもありません。交換レンズの市場は私が社長になってから半分以下に減少していますが、当社は生産を維持し、雇用は増えています。これが今後も維持することが最大の目標です。日々頭をひねっています。

──開発や研究費などの投資にも影響がありますか。

山木:長期的視点で投資しています。設備や人に対する投資は継続的にしないと、やがて会社の死を招きます。売り上げや利益は極力維持し、明日への投資を通して技術力を磨き、ブランド力を上げ、将来に向けての種を絶えずまかなければならないでしょう。

ミラーレス専用設計により、軽量・コンパクトを実現した最新のレンズ「85mm F1.4 DG DN | Art」(写真:杉浦美香)

──最後に、座右の銘を教えてください。

山木:「Anything goes」。これは科学哲学者のポール・ファイヤアーベントの言葉で、日本語だと「何でもあり」です。彼はもともと物理学、化学の研究者ですが晩年は科学哲学者になり、『方法への挑戦:科学的創造と知のアナーキズム』という本を書きました。経営も本質はこれだと思います。固定観念で縛られずに物事を見て、判断すれば違うものが見えます。

 経営だけではなく開発研究も同じです。クリエイティブな仕事もパターン化するとルーティン作業になります。常に疑って考えてないと進化が止まります。科学が発展する中、様々な考え方を否定していった最後に残ったのが「Anything goes」という言葉でした。本の副題が「知のアナーキズム」。パンクっぽくて格好がいいと思っています。

大好きなブリティッシュ・ロックについて熱く語る山木社長(写真:杉浦美香)