シグマが見据える日本型ものづくりの未来

──社長自らがプレゼンされていますね。

山木:本当は恥ずかしいです。娘二人と息子がいるのですが、下の娘がお腹を抱えて笑うんですよ(笑)。

──コロナをきっかけに。広報宣伝についても気づきがあったということになりますね。

山木:当社は、新製品についてはレビュアーにレビューしていただいています。基本的にはメインはそっちだと思います。同時に、私だけじゃなく、開発者が自らの言葉で自分たちがつくった作品を語ることも重要だと思っています。最近、ワインや日本酒も造り手や造り酒屋が実際に直接客に能書きをしてくださいます。それはとても面白いし、ためになります。

ユーチューブで自ら新製品のプレゼンをするシグマの山木和人社長(スクリーンショット)

 ソムリエの話もいいけれども、実際に造っている人がどういう気持ちで造ったのかを聞いているだけで飲みたくなってきます。造り手からどんどん発信するのがこれからは重要だと思います。カメラやレンズも同じです。

 開発を始める時に、この製品はお客様のどういった問題点を解消するのか、どういうコンセプトでつくるのか、今までにない価値は何か──といったことを話し合います。そういういうところがコアとしてあります。そして、開発者が工夫し、実現すというる過程があります。どういう目的で、技術者のどんな努力で製品ができたのかということを系統立てて話すと、それが最終的に作り話ということではなく、真の「ストーリー」になります。

 私自身もものを買う時、ブランドにどういう歴史や思想があり、どういう人か関わっているのかを重視します。今後、ますます選択的に選ぶという、消費者の行動の意味が重要になりますので、それを発信していかなければならない。一生懸命つくっているエンジニアや工場で働く人の努力に報いる必要があります。単に製品をつくり、製品とは異なるコマーシャルやキャンペーンにお金をつぎ込むより、技術、開発、作業する人たちの込められた努力、思いを伝えることが一番だと思います。

「SIGMA fp」そぎ落としたシンプルなデザインも魅力(写真:シグマ提供)

──ものづくりの空洞化が叫ばれるようになって、だいぶ時間がたちました。コロナ禍という危機的状況の中、日本のものづくりはどうなっていくと思いますか。

山木:人口減少と高齢化が進み、製造業を希望する若者が減っています。当社の会津工場は地元の高校卒業者にとって有数の就職先の一つであり、人手確保に困ることはありませんが、日本のものづくりについて言えば、いい環境にはありません。

 しかし、日本人はおしなべて優秀で、ものづくり、特に当社のような多くの部品を緻密に作り上げ、すり合わせるところには非常に向いています。倫理観や道徳意識も高く、いいものをお客様に届けようとする責任感があり、仕事に自分の人生のやり甲斐や意味を見出そうとする人が比較的多いように思います。日本人だけが高いということではなく、相対的にという意味です。

 もう一つ。今の日本の若い人は生まれた時から豊かな先進国で育ち、世界中のいいものを目にしているという素養があります。世界でもてはやされているミニマリズムのような美的感覚も持っています。ものをつくるという意味では、文化的バックグラウンドがあり有利です。マスプロダクションは難しいでしょうが、いいものをつくるという意味では、競争力は十二分にあると思います。

フルサイズミラーレスカメラのSIGMA fpは、高画質なwebカメラとして活用することも可能(写真:シグマ提供)