5つのアクションでSDGsを推進する

 これまででSDGsを推進するときの課題が見えてきたのではないだろうか。そこで、実際にSDGsを推進するにあたり、自社として取り組むべき5つのアクションを提示したい。

①ビジョン・戦略策定

 まずは、ビジョン・戦略づくりである。自社を振り返り、強みや弱みを明らかにした上で、将来の動向を調査し、自社のバリューチェーンに与える影響を分析し、機会や脅威を明確化する。そしてSDGsビジョンの策定、最も重要な課題(マテリアリティ)を特定する。その後は中期経営計画とリンクした形でSDGs活動プランを策定するという流れだ。

②事業・機能の強化

 2つ目は、SDGs活動プランを実現するための事業・機能の強化である。SDGsで掲げる社会貢献目標と自社の経営成果という両面を同時に実現するために、各事業・機能の強化に必要な技術を高度化する必要がある。自社の機能、例えば、戦略、開発、調達、製造、物流、販売、人事総務など全ての機能においてSDGsの推進でどのような価値向上が行えるのか、客観的に判断しつつ実践へと歩を進める必要がある。

③運用・仕組みの構築

 3つ目は、SDGs活動プランをPDCAサイクルにのせ、運用する仕組みづくりである。SDGs活動プランの各プロセスや機能に目標を展開し、KGI/KPIという管理指標を設定し、それをモニタリングし、アクションする仕組みを構築する。

④組織人材・文化の構築

 4つ目として、SDGsを推進する一人一人の意識啓蒙や企業文化の構築も忘れてはならない。組織人材・文化構築のためにはサステナビリティ研修やSDGs研修などを通した啓蒙や全社的な組織風土の改革も非常に有効である。

⑤認知・ファンづくり

 最後に、そうした活動状況を投資家を含めたステークホルダーにしっかり伝えることが重要である。SDGsを通した自社の認知・ファンづくりを社内外に向けて広報し、ESG/SDGsに関連した事業価値の創造を分かりやすいストーリーにして、ステークホルダーへ開示していく必要がある。また、こうした情報開示は、社員のエンゲージメント向上にも大いに役立つ。

 今後、このコラムでは約20回にわたり、SDGsを追求し、環境・社会・経済価値を同時実現するサステナビリティ経営に関する情報を公開していく。

コンサルタント 山田朗 (やまだ あきら)

日本能率協会コンサルティング
生産コンサルティング事業本部 品質革新センター シニア・コンサルタント
エネルギー管理士 エネルギー診断プロフェッショナル

生産、開発部門のコンサルティングを経て、環境分野を中心としたコンサルティングに従事。主要テーマ:環境・サステナビリティ経営戦略立案、環境マネジメントシステム(ISO14001)の高度化、LCAを活用した環境負荷の定量化と削減、温室効果ガス削減、省エネルギー推進(エネルギー生産性)、資源生産性向上支援およびSDGsを経営に活かす支援などを中心に活動。