労働生産性と国民の幸福感の関係
上に述べたように、これまで私たちはお客さまへより良い製品やサービスを提供できるようマネジメント改革や経営改革に取り組んできた。しかし、会社は成長し発展したとしても、従業員の豊かさや幸福感は向上していると言えるであろうか? 私は個人的には、そうは言えないと感じている。
ここに興味深いデータがある。日本生産性本部が出している『労働生産性の国際比較(2019)』と国連の関連団体が出している『ワールド・ハピネス・レポート(2019)』から、労働生産性が高い上位35カ国について、国民の幸福感との関連を調べている。
この図から次のことが分かる。
・労働生産性と国民の幸福感は相関関係にあると見なせる
労働生産性が高くなるにつれ、国民の幸福感も相関して高くなっている傾向がみられる。特に欧米諸国においてこの傾向は顕著である。
・日本はこの相関から外れている
残念ながら、わが国日本は、労働生産性においても国民幸福感においても、上記の欧米諸国と比較すると低い位置にある。また、私が最も懸念するのは、労働生産性と国民幸福感が相関した関係になっていないのではないか、という点だ。
仮にそうであれば、これから私たち日本人がどれだけ生産性向上の努力をし続けても、幸福感は向上しないかもしれない。
この相関から外れている韓国、トルコ、ギリシャは最近、経済・通貨危機に直面した国であり、日本は少子高齢化に伴う社会保障費の負担増、財政危機に直面している国であることを考えると、国の政策面に原因があるかもしれないという疑問点は免れない。しかし、労働生産性の向上が国民幸福感に結び付いていないことは大きな問題であると考える。
従って、これから日本企業はマネジメント改革や経営改革による企業の成長・発展、継続が従業員の福利厚生や幸福感の向上につながるよう、もっと真剣に考え、新しい施策を打ち出していくべきではないだろうか。