ボッシュ、P&G、アマゾンが挑むAI時代の業態変革

現状維持は衰退、CES 2020に見る企業の「なりわい」革新

朝岡 崇史/2020.2.14

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 ちなみに現在、音声認識AIの世界シェアはアマゾン、アリババ、百度(バイドゥ)、グーグルの順だと言われ、トップのアマゾンのシェアは全体の3分1を超えると推測されている。CES 2020の時点で、トヨタ自動車、フォード、BMW、ランボルギーニなどがアレクサの搭載を発表しており、今後もさらに提携企業は増えるだろう。

アマゾン・アレクサを搭載したランボルギーニ・ウラカンEVO。ランボルギーニの展示ブースにて(筆者撮影)

 そしてアマゾンにとってのもう1つの戦略的な機会点は「処理能力」と「地域網羅性」を兼ね備えた盤石なクラウドサービスだ。仮に高速・大容量・低遅延の5Gネットワーク網が張り巡らされたとしても、遠くない将来、国境や州をまたぐ移動を想定した時に、クラウドに強みをもつアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は自動運転を開発する各陣営(中国を除く)にとっては魅力的な選択肢に映るはずだ。

 加えてCES 2020では、アマゾンは自らのクラウドシステムの優位性を盤石にするために日本のデンソーやカナダのセキュリティ技術開発のブラックベリーとの提携が強調されていた。

 特に後者のブラックベリーであるが、スマートフォンのマーケットでは2000年代の終盤にiPhoneとの競争に敗れてモバイル機器の製造から一旦駆逐されたという黒歴史を持つ。しかし、過去に一度もハッキングされたことがないという高いセキュリティ技術を活かし、自動運転の市場ではネットワークセキュリティの専門プレイヤーとして頭角を表してきていることは特筆に値すると言えよう(CESにもここ数年、連続出展を果たしていることでも注目されている)。

 ネット通販で覇者に上り詰めたものの、さらに盤石な事業ポートフォリオ構築のために「なりわい」を拡張したいネット時代の覇者アマゾン。

 対照的にネット時代には苦渋を舐めたものの、「なりわい」の見直しで敗者復活戦を辛くも勝ち残ったブラックベリー。両社がAI時代の入り口でタッグを組むことは、蓋(けだ)し運命のいたずらというべきだろう。

トップが「なりわい」革新をコミットするトヨタ

 翻って日本の企業はどうだろうか。

「なりわい」革新で、ボッシュ、P&G、アマゾンと互角以上に存在感を放っているのがトヨタであることは異論の余地はないだろう。

 CES 2018の記者会見で豊田章男社長がサプライズ登壇し、「自動車製造業」から「モビリティサービス業」(正確にはモビリティカンパニー)への「なりわい」転換を高らかに宣言したことは記憶に新しい。

 創業家としては3代目の豊田章男社長が大英断に踏み切ったのは、昨今の自動車の製造販売を取り巻く事業環境の逆風もさることながら、初代・豊田佐吉による自動織機の発明と製造販売、2代目・豊田章一郎による自動車の製造プロセスのイノベーションと販売面での大成功、と代替わりの度(たび)ごとに「なりわい」転換のチャレンジをしてきたという企業のDNAや自負もあるのだろう。