あのアマゾンが自動運転業へ? CES 2020で自動運転コーナーに出展したアマゾン(筆者撮影)

(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役)

 企業がお客さまに対して提供する価値を、筆者は「なりわい」(生業)という言葉で表現している。マーケティング用語で言えば「Value Proposition」(バリュープロポジション:提供価値)に近く、(あえて文学的な表現が許されるならば)お客さまの眼に映る企業の「生きざま」であると言い換えることもできる。

 ネット時代からAI(IoT)時代へダイナミックなシフトが起きている現在、企業間の競争も、GAFAがその基準を作った一強多弱の「デファクト型」から、複数の企業が「パーパス」を掲げて共創する「デジュール型」へとゲームチェンジの兆しが顕著になりつつある。その最前線の状況は、CES 2020を題材にした先の記事でお伝えした通りである。

(参考)「主役なき『CES 2020』で見えたGAFA後の覇権の構図」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58986

 このような変化の激しい事業環境の中、大多数の企業にとって、「現状維持は衰退」を意味する。過去の成功体験はむしろ「成長を阻む負債」となって企業に襲いかかってくるのだ。

 それでは企業はいかなるサバイバル戦略を採るべきなのだろうか?

 今回はCES 2020で筆者の目に止まった3つの企業、ボッシュ、P&G、アマゾンの3社の、それぞれの生き残りをかけた「なりわい」革新について追いかけてみることにしたい。

【ボッシュ】自動運転やスマート家電へ「なりわい」を拡張

 ボッシュ(正式社名:ロバート・ボッシュ・GmbH)はドイツに本社を置く、自動車部品と電動工具の世界的メーカーである。1886年にロバート・ボッシュによって設立され、日本進出も1911年にまで遡る。自動車部品の分野では「コモンレール式ディーゼル燃料噴射装置」や「ESC(Electric Stability Control:横滑り防止装置)」の特許が有名で、クルマ好きの読者の方ならすぐにピンとくるだろう。

渋谷のボッシュ株式会社1階ロビーにある「cafe 1886 at Bosch」に展示されている過去のボッシュ製ターボチャージャーの部品(筆者撮影)