筆者の米国出張時の経験から言っても、スクールバスの運転手が昼間の空き時間にギグワーカーとしてウーバーのドライバーをするというような、本来のシェアリングエコノミーを地で行くケースは現在では少数派で、大半はフルタイムの“プロフェッショナル”であり、アプリからの配車リクエストでウーバーとリフトを掛け持ちしているようなマルチなドライバーが多い印象を受ける。自らの裁量で働く時間を決めるという、古き良きギグワーカー的な働き方は概ね崩壊していると考えた方が良さそうだ。

 加えて、企業(ウーバー)側も、競争力強化の目的で、料金や手数料を管理するだけでなく、特定の時間やエリアでは料金が割り増しになる仕組みを導入して来ている。顧客によるドライバーの評価システムをドライバーが企業(ウーバー)から受け取る報酬とリンクさせている点も、事実上、AB5が挙げる「雇用主のコントロール」と見なされても仕方がないかもしれない。

 これらの結果としてAB5の(A)から(C)までのスクリーニングのすべてばかりか、1つの条件もクリアできない「搾取経済」的なドライバーの比率が増えた、というのはギグエコノミー企業の雄であるウーバーやリフトにとっての「不都合な真実」である。

オペレーションコストが増大、経営の逆風に

 2019年3月25日、ロサンゼルスでウーバーのドライバーによる大規模なデモ活動が行われた。アプリ内の一方的な通知でドライバーが受け取る報酬が1マイルあたり25%カットされたことに対する抗議だったが、これがタイミング的にAB5成立の追い風となった可能性は否めない。

 今年5月に念願のIPOを果たしたとはいえ、直近2018年第2四半期(4~6月)のウーバーの決算は、売上高が前年同期比14%増の31億6600万ドル(約3420億円)とアナリストの予測を下回る低い伸び率に終わり、純損益も52億3600万ドル(約5655億円)の赤字と振るわない。
 
 この上、ドライバーを「独立請負人」でなく、(妥協的な施策も含めて)実質的に自社の「従業員」と認めざるを得ないとすれば、報酬や待遇の改善のための費用はたちまちオペレーションコストの飛躍的な増大につながってしまう。

『WIRED 日本語版』(「ウーバーのドライヴァーは『従業員』カリフォルニア州での法案通過が波紋」)では市場専門家の試算として、ドライバーが従業員と見なされた場合、ドライバー1人当たり3625ドル(約39万円)の追加コストがかかり、ウーバーとリフトでは年間8億ドル(約864億円)に達すると見積もっている

 しかもAB5と同様の法案は先述のニューヨークなど全米の他の州でも制定が検討される可能性が極めて高い。