軽いフットワークで橋渡しを
――新規事業の創出において、今後特に注力していきたい領域や方向性があれば教えてください。また、それを支える考え方などがあれば教えてください。(松岡)
真島 「顧客価値創造企業」になろうというビジョンを掲げ、新規事業を生み出すことがミッションとなったDXビジネス事業部では、最初の段階では、お客様の課題をいかに解決するかということにこだわり、製造業としての「モノ」よりも「コト」を重視していた時期がありました。日本の製造業が陥りやすい、「技術」を過信する風潮に反発していた意識もあったと思います。
しかし、実際にお客様に接していると、当社の「映像」「音響」「通信」といった強みとなる技術に対して高い期待があることが分かり、これらの技術に立脚し、その応用を通じて取り組むべきとの考え方をするようになりました。
あと、当社は顧客から見たブランドイメージを大事にしています。当社のブランドはカーナビゲーションやドライブレコーダー、ビデオカメラ、ヘッドホンだけでなく、業務用無線やアマチュア無線といったマニアックともいえる領域でも認知されてきました。また、数多くの人気アーティストを擁するビクターエンタテインメントもあります。
当社にはこのようなブランドを通じた顧客接点があり、顧客に何を求められているかを強く意識しています。マニアックという分野は、一見ニッチであると思われますが、とても奥深く、市場の裾野は広いと認識しています。
加えて、既存の技術や顧客接点を持つ3つの事業分野とは異なり、DXビジネス事業部では、1つの会社でできることの制約を超えたいと考えています。ネットワークを組もうとすると、通信事業者など社外の協力を得ることは欠かせませんが、社外との取り組みは多くの気づきをもたらします。価値実現に必要なら手っ取り早く社外のパートナーとの共創に取り組み、しっかりした座組みはうまくいってからじっくりと構築すれば良いと思っています。
こうした考え方の背景には、テレマティクス事業が雪だるまのように転がりながら育った実体験があります。また、当社には職人技ともいえる技術者のこだわりが受け継がれており、音作りや画作りにプライドを持っています。
ドライブレコーダーは当初、安価なモデルが先行していたところ、当社が得意とする映像技術を生かし、細部までこだわった画作りをしたことで、今では業界トップレベルのシェアを獲得するに至りました。このドライブレコーダーに通信機能を搭載することで、自動車保険会社や海外スタートアップのライドシェア事業者などと繋がり、それぞれの課題を解決するソリューションの提供へと広がったのです。
我々の事業部としては、当社の強みである「映像」「音響」「通信」の技術に立脚した新しい顧客価値の実現を、日本文化となりつつある「オタク的」な趣味の分野で広げて行きたいと思います。また、テレマティクスにおいては、現在、我々の事業部で進める、通信型のドライブレコーダーを発展させ、映像技術を駆使した安心安全分野へ展開したり、昨年度より開始したタクシーの配車事業を発展させ、MaaSや高齢化社会へ対応することなど、分野をどんどん広げたいと思っています。あとは、当社が保有する知財も非常に多いため、これも活用もできれば良いですね。