真島太一氏(以下敬称略) 当社は2008年10月に、日本ビクターとケンウッドという2つのメーカーが統合した会社であり、「オートモーティブ」「パブリックサービス」「メディアサービス」の事業分野で事業展開しています。

 2015年に策定した中長期経営計画「2020年ビジョン」で、従来型の「製造販売業」から「顧客価値創造企業」になろうというビジョンを打ち出しました。多くの日本の製造業が直面している利益率の低下を見据えた上で、改めて顧客視点での「価値」が何であるかを見出し、新規事業を積極的に開発するというスタンスを経営の方針として取り入れました。

 しかし、各々の事業分野が各々の方針に基づいて、バラバラに新しい取り組みをしてしまうと、どうしてもそれぞれの事業領域に特化したものづくりに偏ってしまいます。そこで、コーポレート部門として「ソリューション開発部」という組織を新設し、全体のバランスを見ながらビジョンを推進する形に変えました。なお、2019年4月1日付でソリューション開発部が事業部として独立し、「DXビジネス事業部」に形を変えています。

 ソリューション開発部では、社内を活性化する全社的な活動として「イノベーションアクト」という取り組みを実施しました。いわゆるアイデアソンです。「潜在的にある顧客の需要が何であるか?」ということを全社の従業員へ投げかけ、2年ほどアイデア探索を行い、2案件を発掘しました。

 そのイノベーションアクトでは、「アイデアはあってもやる人がいない」「蓋然性がないため事業計画との相性が悪い」などの、新規事業に対してマイナスに作用することが多く発生し、大変苦労しました。

 一方で、ソリューション開発部自体は、新規事業の開発を1つでも生み出すことが求められていたため、当時の数名のメンバーが必死に新規事業開発を行い、1年半をかけてなんとかテレマティクスの事業を軌道に乗せることができました。

 全社活動であった「イノベーションアクト」では、新規事業を生み出すためには人材育成も非常に大きな課題であるということが分かってきました。事業創出と人材育成をいかに両立するかを模索していた時に出会ったのがCrewwでした。アクセラレータープログラムを模索していたわけではないのですが、スタートアップ企業が事業そのものの担い手になりうること、スタートアップ起業家との協業案作成が社内人材の育成になりうること、プログラムとしてそのプロセスが確立していることが決め手でした。

 当社だけでは思いもよらないアイデアの募集を意識して2019年にアクセラレータープログラムを実施し、最終的に6社のスタートアップとの協業案を採択しました。

――新規事業開発を推進する事務局として重要だと思うこと、またその取り組みを通じて得た成果や変化について教えてください。(矢野)