2017年に情報通信機器としての世帯保有率がパソコンを抜いて1位となったスマートフォン(スマホ)。いまや普段使いのIT機器として最も身近な存在となっています。投資や資産運用の世界でも、かつてはパソコンによるネット取引がほとんどでしたが、スマホやタブレットからのアクセスや独自の取引ツール(アプリ)が中心になりつつあります。

 そしていま、「スマホ証券」が話題を集めています。スマホを自在に操る20代~40代の比較的若い世代へ向けて、新しい資産運用の形を提案しているように思えます。スマホ証券はどんな特徴があり、どのような活用法があるのでしょうか。

スマホ取引をメインに投資ビギナーを取り込む

 ただ「スマホ証券」という呼び名、ちょっと不思議に感じませんか。対面の大手証券会社でもネット専業証券でもスマホでネット取引はできます。

 にもかかわらずあえて「スマホ証券」と呼ばれるのは、スマホでの取引に特化した、もしくはスマホ取引を前提に考えられた証券会社ということです。特徴的なのは、独自の取引アプリを開発し、売買を実行する手数(タップ数)が極力少なくなるよう設計されている点。比較的若いスマホユーザーを対象に、投資がまったく初めてという純粋な投資ビギナーを取り込むサービスに集中しています。

 以下におもなスマホ証券の概略をまとめました。

ワンタップバイhttps://www.onetapbuy.co.jp/
 2016年に日本初のスマホ証券としてサービスを開始した。積み立て投資しながら分配金・配当金がもらえる「つみたてロボ貯蓄」をはじめ、米国株式やCFD(差金決済取引)など、比較的幅広い商品ラインナップをもつ。

ウェルスナビhttps://www.wealthnavi.com/
 ロボットアドバイザー(ロボアド)を使って個人ごとに最適と思われるポートフォリオ(資産の組み合わせ)を提案する。ロボアドにおける預かり資産残高は国内1位(2019年6月時点、モーニングスター調べ)。投資対象はETF(上場投資信託)。

お金のデザインhttps://theo.blue/
 サービス名称は「THEO」(テオ)。ETFを使ったロボアドによるグローバル分散投資を実践。積み立ても可能。対象市場以外のリスクも取りに行くスマートベータ型と呼ばれるインデックス投資を採用しているのが特徴。

フォリオhttps://folio-sec.com/
 個別株式を各種テーマに合わせて組み合わせた「テーマ投資」と、ETFを使ったロボアドによる「おまかせ投資」の2種類を用意している。お金と社会に関するオウンドメディア『FOUND』で投資啓蒙もおこなっている。

LINE証券https://line-sec.co.jp/
 証券最大手の野村ホールディングスとの合弁で2019年8月にスタート。LINEユーザーを対象に、同社が独自に選んだ国内100社の株式とETF9種類を、1株・1口単位で購入できる。

スマートプラスhttps://smartplus-sec.com/
 コミュニティ型株式取引アプリ「スマートプラス」を提供。売買機能と証券システムインフラをパッケージ化したBaaS(バース:Brokerage as a Service)によるプラットフォームが特徴。東証に上場するさまざまな商品の取引が可能(一部除く)。

エイト証券https://www.8securities.co.jp/
 もともとは、独立系証券会社としてロボアドを使ったETFによるラップサービスを提供していた。2019年に野村アセットマネジメントの完全子会社へ。主な投資対象はETFで、投資信託(投信)は含まれていない。

tsumiki証券https://www.tsumiki-sec.com/
 丸井グループの100%子会社として2018年に設立。積立NISAの対象になっている4投信に、丸井のエスポカードを使って積立投資する。

特徴はロボアド採用とETF

 こうして概要を並べてみると、大きく2つのポイントが見えてきます。ひとつは、AIを活用したロボアドを採用している証券会社が多いこと。もうひとつは、各社とも具体的な投資対象が主にETFであることです。

 1つめのロボアドについては、以前の「話題の「ロボアド」はどこまで有効か」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55920)で触れています。ロボアドは、アプリを通じて投資に関するいくつかの簡単な質問に答えると、コンピュータ(アルゴリズム)が自動的に最適な資産配分や投資対象を提案してくれます。

 結果のみを投資家に提案することになるので、投資可能なすべての金融商品を取り揃える必要がありません。スマホ証券にとっては、取り扱い商品を絞り込むことで間接的なコスト削減につながります。

 投資対象が主にETFであることについて。ETFは「投資の楽しみを体感できる「隠れた優れもの」ETF」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53887)で取り上げています。さまざまな指数に連動することをめざして運用され、それぞれが上場している投信です。

 ETF最大の特徴は透明性の高さと運用コストの低さにあります。連動をめざす指数は任意で設定・採用できるので、理論上はあらゆる国・市場に投資するETFを組成できます。ETFならグローバル分散投資を比較的簡単かつ低コストで実現することができるわけです。

投信が商品ラインナップから外れている理由

 一方、資産運用の中核商品といわれる投信がほとんど採用されていないことが気になるかもしれません。その理由は明確で、個別株式やETFと、一般の公募投信とでは取引・決済システムがまったく別なものだからです。上場商品である個別株式やETFは、市場が開いている時間は時々刻々と価格が動きますが、投信は当日の(基準)価格は1つだけ。コスト体系も違っているので、投信を採用するとなると、もうひとつ別なシステムが必要になるのです。

 一般に、東証に上場している商品であれば同じ取引・決済システムで取り扱うことができます。同じシステムで個別株式やETF、リート(不動産投信)などが提供可能になるので、拡張性をもった商品ラインアップが実現できます。

 コストをかけて投信を扱うシステムを加えるのか、個別株式やETFなどでユーザーの期待に応えることができるか。それらを勘案した結果、投信を扱う優先度が下がっているのです。

今後の成長性は現状では未知数

 スマホ証券はAIベースのロボアドを推す金融ベンチャーが、新しい投資チャネルや投資家層を創出しようという動きです。企業としての今後の成長性は、期待はされつつも現状では未知数といえます。証券会社選びにあたっては、企業とサービスの継続性に十分な注意が必要でしょう。ちなみに証券会社が破綻した場合、法律で定められた「分別保管」と「投資者保護基金」によって、個人の投資資金は1000万円を上限に保護されます。

 スマホ証券では、基本的にロボアドが提案するETFによるポートフォリオに投資することになります。投信ではありません。筆者はETFの商品性を高く評価していますが、スマホ証券での投資においては自分がどのような市場にいくら投資しているのか把握しづらくなる可能性があります。この点にも注意が必要です。

 東証に上場している企業は3600社超、ETFは約200銘柄、リートは60銘柄超。さらにいつでも売買できる投信は5600本以上あります。しかしこれらのうち、投資に値する商品は一般に1~2割といわれています。合理的な理論で投資先候補を絞り込んだスマホ証券のポートフォリオ提案は、投資家の迷いや選別作業の時間を最小化する効果が期待できるでしょう。これから「投資を経験してみたい」という方にとっては、最初に検討してもよいサービスだと思います。