今後の展開
電子契約サービス等、大手企業を中心にある程度認知や導入が進んでいるものも存在するが、他の「X-Tech」業界に比べると発展途上といわれるLegalTech。しかし、今回見てきたサービスの多様さからもうかがえる通り、多くの可能性が眠る領域だ。
例えば、2019年4月1日に「労働基準法施行規則」が改正されたことで、労働契約を締結する際、これまでは書面での交付が義務づけられていた労働条件の明示手段に、FAXや電子メール、SNS等が加わった。Holmesはこの変化に対し、外食業や小売業・宿泊業等の多店舗展開企業向けの雇用契約ソリューション「Holmes for 店舗」をリリースすることでいち早く対応している。分野を問わず、法規制が変化するタイミングとは、LegalTech市場にとってチャンスと捉えることもできるだろう。
LegalTechサービスの価値や本質とは、単なる「労務の効率化」だけではないはずだ。もちろんその側面もあるだろうが、「限られた専門家や専門書に集中していた知識や情報を、より広く自由に活用できるようにする」ための仕組みも求められていることは間違いない。政府主導でシェアリングエコノミーやデータのオープン化が推進されている潮流を考えると、今後も「法律知識・情報の共有」という観点から、AIやオンライン上のプラットフォームを活用したサービスが増えていくのではないだろうか。
法治国家に住んでいる限り、誰もが「法律」と無関係ではいられない。ビジネスを展開する企業や個人にとって、法務は訴訟リスクの回避やビジネススピードの改善、より創造的な施策展開を考える上で、切っても切り離せない。LegalTechによって、企業・個人が必要な時に正確な情報を手に取ることができることの意義は、今後ますます増していきそうだ。