注目の国内サービス事例

「法律にまつわる課題」や、その解決につながるテクノロジーは多岐にわたるが、今回は企業法務に関係する領域を中心に紹介する。契約書をはじめとする法務書類の作成・管理や知財戦略といった法務の最適化は、健全な企業活動を支える上でも極めて重要な基盤となる。各領域ごとに、代表的なサービスや注目の事例を見ていこう。

【法律文書作成】

Holmes(Holmes)
 契約書の作成から締結、管理といった、契約書にまつわる煩雑な業務を最適化するデジタルプラットフォーム。用意されたテンプレートを使って簡単に契約書を作成できるほか、社内承認プロセスをHolmes上で「見える化」し、部署を跨いだ確認・修正作業で生じるコミュニケーションコストを大幅に削減できる。電子契約だけでなく、紙の契約書も含めて一元管理できるため、契約書の検索やバージョン管理も容易になる。

 2018年10月より世界的に広く使用されている電子契約サービス「ドキュサイン」と提携しているため、Holmes上でドキュサインを使った契約書の締結を行うこともできる。

LegalForce(LegalForce)
 2019年4月2日に正式リリースされた、AIを搭載した契約書自動レビューソフトウェア。作成した契約書のファイルをアップロードし、類型や自社の立場を入力すると、瞬時に不利な条文や欠落条項を指摘。担当者によるチェックと併用することで、抜け漏れや見落としを防ぐことができる。

 さらに、AIに「リスクあり」と判断された箇所については、指摘ポイントとあわせて弁護士監修の参考条文例が表示されるため、修正作業が発生した際にも素早く対応できるようになる。また契約書作成時にも、あらかじめ用意された雛形集「LegalForceライブラリ」を利用可能。加えて、過去に作成した契約書をデータベース化することで、過去の契約書や自社の契約書雛型から条文単位で文言を検索し、活用することもできる。

【電子契約】

クラウドサイン(弁護士ドットコム)
「紙と印鑑」を「クラウド」へ置き換え、PCだけで契約作業を完結させることができる電子契約サービス。PDF形式で作成した契約書をクラウドサインへアップロードして取引先へ送信。確認依頼メールを受信した取引先の担当者がクラウドサイン上で契約書に押印すれば、契約の締結が完了する。契約締結のスピード化や郵送代・紙代・インク代・印刷代を削減できるほか、契約書原本をクラウドで一元管理することで、コンプライアンスの強化を図ることもできる。

 2015年10月のサービス開始以降、2019年3月時点で導入社数は4万社を突破。累計契約締結件数は50万件、導入地域も世界34カ国に達しており、受発注や入社書類のやり取り等、様々なシーンで活用されている。国内のLegalTech市場を牽引するサービスの一つといえるだろう。

【商標出願】

Cotobox(cotobox)
 オンライン商標登録支援サービス。商標検索から書類作成、提携弁理士とのメッセージのやり取りといった、一連の作業やステータスを管理・サポートする仕組み。

 特に、個人でやろうとすると時間がかかってしまう事前調査において、同サービスでは独自開発のAIを導入し、商標の権利範囲を簡単かつ適切に検索可能にしている。企業における知財戦略の重要性が高まる中で、知財部のような専門組織を置いていない中小企業やスタートアップからの需要は今後も増していきそうだ。