意思決定や人材マネジメントなど組織プロセスに関しては、順調群も非順調群も「新規開発戦略の明確さ」「自社の強みの明確さ」「自社の意思決定のスピード」が成功要因であると半数以上が回答。「自社内の意思決定者が明確で、強いオーナーシップがあること」「チャレンジ精神・失敗奨励の組織風土」が約4割で続く。

 社外連携の順調群と非順調群で差が見られたのは「撤退判断までの時間軸を長くとり、成功するまでやりぬくこと」である。「アイデアを精査・選抜する仕組み」「社外の連携先に関する情報収集」といった探索活動に関する項目、「社外の連携先の意思決定の速さ」「自社優位・優先でなく、対等なパートナーシップの意識」といった社外連携先との関係性に関する項目にも差が見られる。

 戦略や自社の強みが明確であるから、自社や連携先企業の意思決定のスピードを速めることができる。現場に権限を渡しつつ責任は押し付けない。自社のオーナーシップと社内外の対等で自律した関係性があるから、成功するまでやりぬくことができる。そのような組織像を描くことができそうである。

 担当者自身の社外連携の中での経験や、新規開発を担当する人材が強化していく必要があるものについても聞いた。約半数が個人的な学びや収穫を実感しており、順調群のほうが、楽しさや社内での影響力を実感する傾向がみられる。

 強化すべき行動や能力に関して、順調群も非順調群も「発想力」「論理的に思考・説明する能力」「他者の巻き込み力」が共通して挙げられる。順調群では「専門外の知識の豊富さ・業務外の情報への関心」への重視度が高い。探索活動同様、いかに自社の慣習の外にある知識や連携先にアクセスするかが重視されているようだ。また、「苦難を乗り越え、最後までやり遂げるエネルギー」「社会の課題やニーズを解消したいという強い思い」など、やり遂げることの大切さを強調する傾向が目を引く。

人と組織をどうすればいいのか

 このような調査を踏まえたうえで、オープンイノベーションを成功させるために、人や組織に対して何をすればいいのか、以下にまとめてみた。

 1つめは「戦略の明確さと共有」である。なぜオープンイノベーションを行うのか、自社の強みは何で何を社外のリソースで補おうとしているのか、何を重視しているのか、ということについて、経営幹部間での共通の理解が必要である。

 2つめは「専門部署の設置」である。未来が既存の延長線上にあるとしたら、各部署での改善で対処していければいいが、一般的に、未来は既存の延長線上にない。ゆえに判断基準、評価の基準、意思決定基準、権限規定、重視する組織風土も異なる。ゆえに、新しいビジネスや商品を考える専門部署の設置が求められる。