変革の当事者はまず人から好かれるべし

加茂:それでは2つめのテーマについて聞きましょう。CDOを筆頭にDXに直接携わっている方々というのは、どうしても社内でいろいろ言われがちなようです。その会社のカルチャーがどうであろうと、「これまでとは違う新しい変化を起こす」仕事で矢面に立つ以上、どうしても異端なイメージで見られてしまいがちですよね? 楢﨑さんのように、DXのために外から招かれたような人は、なおのこと風当たりが強いのではないですか?

楢﨑:SOMPOは経営トップが陣頭指揮で変革の重要性を発信しているので、特に風当たりが強いということはありませんが、いろいろとチャレンジを繰り返す中で、強く認識するようになった真理というのはあります。それが「CDOは社内で好かれなければ駄目なんだ」というものです。テクノロジーやデータと向き合う機会の多い立場とはいえ、本来のパーパスは「変革を部門横断で起こすこと」にありますから、結局は人とのふれあいで共感を得ていくこともCDOの重大ミッションになるわけです。それに、多くの局面でデジタルが使われれば使われるほど、人が持っている「えも言われぬもの」、つまり小巻さんがおっしゃったエモーショナルなものを研ぎ澄ませていく必要性が上がっていきます。ですからCDOはDX関係者の先陣を切って社内で好かれ、エモーショナルな能力を発揮しなければいけないと思い、日々の行動で示そうとしています。「カルチャーの変革」はそういうことの積み重ねで行っていくしかないと思っています。

加茂:まったくもって同感です。海外では日本と違い女性のCDOが多いのですが、もしかしたら楢﨑さんのおっしゃっていた真理を体現する能力において、女性たちが優れているからなのかもしれませんね。

:やはり「接客の拡張」を目指してロボットまで使おうとすれば、どうしたって「それが本当に接客の向上につながるのか」というようなムードは出てきます。ただし私が救われているのは、パルコという会社に創業時から変わらず「新しいチャレンジをすること」への許容文化が根づいている点です。おそらく他の業界であっても、パルコ同様に新しさへの許容度が高い会社の場合は、カルチャー変革の難易度はある程度は抑えられるのではないでしょうか。

小巻:サンリオピューロランドがカルチャーの摩擦もあまりなく比較的順調に挑戦を続けていられる要因は、できる限り自分たちが担い手になる、という方向性で進んできたからではないかと思っています。どうしても先端技術を用いるようなデジタル化の試みは専門性も問われますから、外部の代理店などに託すようになりがちです。しかし、そうして外に出して、ただ待っているような姿勢ばかりが続くと、なかなか社員の間に当事者意識は高まっていきません。ですから、例えば少々頑張れば自分たちでも使いこなせそうなデジタルツールがあれば、人任せにしないで「自分たちでやっちゃおうよ」という風に呼び掛けてきました。やってみてうまくいかなかったとしても、そういう経験の積み重ねがあれば、デジタルに対する敷居も、既存のカルチャーに頼りがちな部分も、だいぶ変わってくるはずだと信じています。

加茂:それでは最後に、各企業で変革を担っている多くの同士に向けて、メッセージをいただけますか?

楢﨑:今の小巻さんのお話にとても共感をしたのですが、やはりこれからは失敗こそが糧となる時代だと思います。新しいチャレンジは、自分事として取り組んだ時こそ、大きな学びや成長につながります。Fail First, Fail Many。失敗してもいいんです。その痛みを外の人に味わわせてしまうなんてもったいない。痛みを自分で感じることが糧になる。だから皆さんも私と一緒に失敗していきましょう、と言いたいですね。

:同感です。私も楢﨑さんに負けず劣らず失敗してます(笑)。ただ、「失敗」って「失って敗れる」という漢字ですよね? ちょっとそれはツライので、「成功しなかった」と自分では言うようにしています。変革を最初から全て成功することはあり得ません。皆さんもどんどん「成功しなかった経験」で教訓を得てほしいです。

小巻:先ほどの続きになりますが、やはり迷っているくらいなら「やっちゃうこと」に価値があると思います。楢﨑さんや林さんもおっしゃったように、仮に失敗をしたとしても、それは偉大な失敗であり、知見が増えることでしかない、と考えています。ですから、変革を任される立場になったなら、大喜びで自分でいろいろやっちゃいましょうよ、と言いたいです。

加茂:ありがとうございます。お三方のお話に乗っかるようで恐縮ですが、われわれCDO Club Japanでも新たなチャレンジを始めました。イスラエルのCDO Clubとの緊密な連携もその一つですし、企業に向けたデジタル成熟度診断やそれを基にした変革支援、さらには大学との連携による教育面でのアプローチも具体的に動き出しています。そうして得た教訓をまたここにいる皆さんとシェアしていければと思っています。