東京電力パワーグリッド 取締役副社長 最高情報責任者(CIO)兼IoT担当の三野治紀(みの はるき)氏。1989年東京電力株式会社入社。2006年6月日本自然エネルギー株式会社代表取締役社長(出向)、2010年7月東京電力株式会社茨城支店竜ヶ崎支社長、2016年4月東京電力パワーグリッド株式会社常務取締役最高情報責任者(CIO)兼電子通信部長などを経て、2018年7月から現職。

 送電線の点検作業も大きな手間がかかります。とくに山間部など保守作業員が容易に確認できない場所では、ヘリコプターで撮影したVTRを作業員がスローモーション再生で点検しています。この点検作業をAI(人工知能)が行う架空送電線診断システムを、AI技術を持つテクノスデータサイエンス・エンジニアリングと共同開発しました。異常検知の高度化と、点検作業時間の50%以上の短縮を目指しています。また、今後点検作業にはドローンの導入も検討しています。

 3つめは約1300カ所ある変電所の設備保全です。NTTデータと共同で変電設備異常診断ソリューションを開発し、2019年度から導入していきます。これは、変電設備データを学習させた画像・映像解析AIによって、変圧器の漏油検知、建物異常検知、アナログメーターの自動読み取りを行うものです。また、異音検知AIを活用し、ベアリングなどの損傷や劣化を判別・検知します。これによって、変電設備の巡視にかかる時間の50%以上削減を目指しています。

――もう一方のデータの利活用の取り組みはどのようなものですか。

データを掛け合わせて分析する

 一つの例が、2018年11月に、NTTデータと設立した「グリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合」です。弊社が持つ電力データと異業種のデータを掛け合わせて分析することで、社会課題の解決や新たなビジネス価値の創出を目指しています。

 活用分野は2つ大きくあります。一つは自治体さま向けの防災や見守りのような公共性のあるサービスです。例えば、統計処理したスマートメーターデータと地図データを組み合わせることで、河川が氾濫したときの時間帯別最短避難経路を表示することなどが考えられます。

 一方、現在30社ほどある会員企業がお持ちのデータと弊社のデータを掛け合わせて新たな付加価値を作り出すことも行います。リアルタイムの統計データを使うことで店舗出店計画の最適化につなげるなどのサービスが想定されています。

 ラボはまだ組合組織で、収益を目指す時期ではありません。ただ、2、3年先をメドにいくつかのものを事業化する予定です。2026年には弊社のメインである託送事業(送電線網を使って電気を送る)以外の新たな事業で1000億円の売上を上げることを目標にしています。