地域活性化を真に望むのなら脱地元の意識と視野が不可欠
一方でゼロワンブースターは、北海道から沖縄に至るまで、スタートアップに関するセミナーやワークショップ活動を多数実施し、事業創造を促進している。昨今は地方創生の一環として、ローカルスタートアップの活性化にトライする自治体も少なくないため、そうした行政機関や地元金融機関とのパイプも太い。しかし、ここでも課題になるのが商圏意識なのだという。「日本の行政によるスタートアップ支援は世界的に見ても地域意識が強くユニークです。その気持ちは分かります」としながら、行政の「有望なスタートアップ企業が地元から出ていかないように」との意識が、企業のチャンスを狭める結果になっているという。
では、どうすればよいのか。合田氏は事例を挙げて説明する。
「例えば仙台市の支援プログラムでは、東北関連で事業をすることが前提ですが、全国の企業を対象にしていました。仙台市の予算を使って、他県の企業まで支援しようというのは、世界では標準的ですが、日本では非常に珍しいケースです。こういう取り組みによって、より広い地域から企業だけでなくさまざまな参加者が集まります。そうなれば、支援を得た後の商圏展開にも広がり、結果的に仙台市のためになります。また先日は、愛知県がスポンサーとなって地元大手・中堅企業と全国スタートアップ企業の連携を推進するアクセラレーションプログラムを実施しました。ここには地元のスタートアップ企業と大手・中堅企業に加え、全国のスタートアップ企業も参加しました」
ローカルシーンの活性化を成功させるべく、あえて広域連携による社会資本構築を重視して取り組む。それがゼロワンブースターの視点だ。「有望なスタートアップ企業が地元から出ていかないように」という閉じた発想の支援では、なかなか企業は商圏を広げて大きな成功を得ることができない。むしろ横に拡大できるチャンスも含めた支援が、結果的に地域の経済に貢献することになる、と合田氏は考えている。
そして、こうした開かれた社会資本の充実こそが、日本の目指すべき方向性ではないかと指摘する。地方創生には大いに貢献したいという合田氏は、だからこそ地元に固執しがちな「支援する側の意識」の壁をこじ開けて、各地のスタートアップ企業と地域企業群により大きな横のつながりを提供し、大きなチャンスをもたらしたいのだという。