世界へ羽ばたこうとする日本のスタートアップ企業のサポートの一方、東京一極集中になりがちなアクセラレーションを、地域でも充実させようと活動するゼロワンブースター。後編では、日本特有の地方行政によるスタートアップ支援の課題と解決策を、ゼロワンブースターの創設者の一人、合田ジョージ氏へのインタビューから模索する。
※前編:起業家は創業時の「熱い思い」にこだわりすぎるな ~国際展開と地方活性とを支援、ゼロワンブースターの挑戦(前編)~
スタートアップに足りないのは資金ではなく視野とつながり
今、合田氏は日本のスタートアップを取り巻く環境をどう見ているのだろうか。気に掛けているのは情報の不足だ。
「グローバルとのデジタルデバイド(情報格差)が尋常ではありません。日本が立ち遅れていると認識している人でも、差を小さく見積もっている例がほとんどです。『イノベーションの世界で日本は、完全に後進国だ』そのくらいの認識が必要です」
合田氏は、ユニコーン企業の数を例に挙げる。「米国や中国に負けているだけで、日本はきっとその次くらいでしょ」という甘い認識の人が意外に多いんですが、GDP世界第3位の日本とよく似た産業構造で、経済規模も近いドイツ(同4位)にも負けているんです」
ユニコーンの数を比較することの意味に議論はあるかもしれない。それも承知の上で合田氏は、「意識の問題」という。資金に関する認識も改める必要があるという。
「日本はスタートアップ企業の数が少なく、米国や中国の10分の1程度です。『それは、スタートアップ企業に対する投資が少ないから』と考えている人が少なくありません。しかし、これは誤解です。調べればすぐに分かりますが、日本のスタートアップ企業1社当たりに対する投資額は、平均すれば米国の3分の1ぐらいと考えることもできますので、悲観するほど少なくもないんです。スタートアップの数が米中に比べて圧倒的に少ないだけで、企業側には現実にはお金が余っていて、有効な投資先が限られているために資金の使い道に困っているというのが実情です」
意識を改め、日本のスタートアップエコシステムを正しい方向に進めていくためにはどうしたらいいのか。合田氏は「商圏に対する視野の持ち方、そして横方向のつながり」が大切だという。
「ヨーロッパで起業した10人規模のスタートアップ企業があったとします。そうすると、大げさでもなんでもなく、その10人の国籍は全員バラバラであることも珍しくありません。そして、最初から当たり前のようにクロスボーダーな商圏を意識します。日本はどうでしょうか。商圏が小さくては、とてもユニコーンになれません」
ゼロワンブースターは、「日本を事業創造できる国にして世界を変える」という目標を掲げている。これからも分かるように、設立当初からグローバルでの成功を強く意識している。世界で70以上のアクセラレータが加盟する世界最大のアクセラレータ業界団体GAN(GlobalAccelerator Network)の日本で最初のFull Memberになったのもそんな思いの表れだ。